研究実績の概要 |
グラフを一つ固定しそのグラフの独立集合を全て集めた集合を考えると, その集合にに対するトグリングと呼ばれる作用を考えることができる.本年度においては, トグリングで生成される群についての研究が大きく進んだ. 特に, A型のDynkin図形,つまりパスグラフ,の独立集合達に対するトグリングが, A型のDynkin図形の独立集合のなす集合上の対称群を生成するという事実について, 共著のプレプリントをまとめた. この事実は, 言い換えると, トグリングで生成される群の, 独立集合のなす集合への作用が, fully-transitive であるということを意味している. 一般のグラフにおいてはトグリングでは対称群を生成できない様なものがあり, この事実はA型Dynkin図形の何らかの特殊性に由来していると考えられる. Asymptotic combinatoircsという分野におけるhomomesyと呼ばれる性質の研究の文脈においてトグリングという作用は登場するが, 本研究で主たる対象としているHilmann-Grasslアルゴリズムを持つようなposetについても対象となっており, トグリングの作用を通すことで本研究の研究対象の特徴がつかめる可能性がある. また, 本年度は, 新型コロナウイルス感染症の影響により, 従来のような研究集会は行うことができなかったが, 「Afternoon seminars on line」という組合せ論に関するオンライン国際集会や「確率・ 統計・ 行列ワークショップ 2020」という対面とオンラインの両方の方法で参加が可能な研究集会を行った. これらの研究集会を通し, 関連する諸分野の情報収集や意見交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては, 新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響により, 当初の研究実施計画を大きく変更する必要が起こった. 特に, 共同研究においては, 従来の様に共同研究者を招聘し議論をするということが難しくなった. オンラインでの議論によりある程度補えるものの, 従来と全く同じ要領ではうまくいかないため, オンラインの議論に関連するノウハウを蓄積する必要があると思われる. そのための機材を試行錯誤しながら設置している段階にあり, 本来の研究以前の準備段階に, 時間が取られてしまった. 一方で, 本年度においてはトグリングに関する成果を得ており, 着実に知見を得ているという点では, 研究は着実に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に引き続き, 新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響が残っているものと考えられる. そのため, 当初の研究実施計画を変更する必要が起こるものと思われる. 特に, 従来の様に共同研究者を招聘し議論をするということが難しいと思われるので, オンラインでの議論により補う必要がある. 現在はオンラインでの議論に関するノウハウや設備が不足しているため, 引き続き試行錯誤をしながらノウハウや設備を充実させる必要がある. そのため, 予算の使途などを適宜変更する必要があると考えている. 研究内容については, 今回得られたトグリングの成果は純粋に初頭的な群論的な方法で解決をしている. この証明の, Posetにおける組合せ論的意味合いや表現論的意味合いを考えることで, 新しい視点を得て良い広範な対象への応用を考えることで, 今後の研究が推進する.
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