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2019 年度 実施状況報告書

多変数モジュラー形式の数論的, 幾何学的及びp進的応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K03210
研究機関大阪市立大学

研究代表者

山名 俊介  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50633301)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード保形表現 / 三重積L関数 / p進L関数 / 例外零点 / 基底変換 / Stark-Heegner点 / 特殊値 / ヒルベルト-アイゼンシュタイン級数
研究実績の概要

p進L関数の補間公式は, 複素L関数とp進L関数の値のズレを測る修正項を伴っている. 興味深いことに, この修正項が関数等式の中心において零点を持つことがある. このとき(複素L関数の中心値が0でなくても)p進L関数の中心値は0になってしまう. このような零点は例外零点と呼ばれている. 楕円曲線のp進L関数が例外零点を持つには, pで分裂乗法的還元を持つことが必要かつ十分である. このときのp進L関数の微分値と複素L関数の中心値の関係式が, Mazur-Tate-Teitelbaumに予想され, 肥田理論を使ってGreenberg-Stevensに証明された. 本年度に台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授と筆者は, 三つのp通常楕円曲線に付随する三重積p進L関数の例外零点を決定し, その(高階)微分値と複素L関数の値の関係式を証明した.
三つのGL(2)の保形表現は, 中心指標の積が自明であるときに, その三重積L関数の中心値とモジュラー形式の対角積分の二乗との関係があることが知られていた. この関係は標準的局所不変三重線形形式を使って明示的関係式として与えられ, 市野公式と呼ばれる. この三重線形形式が0でないこと局所イプシロン因子の符号で判定できる. 市野公式は数論に多くの応用を持つことが知られている. 例えば, Henri DarmonとVictor Rotgerは, 市野公式を使って, 三重積p進L関数の値と対角サイクルのAbel-Jacobi像と結び付け, 楕円曲線の有理点の解析に応用した. 筆者とMing-Lun Hsiehは市野公式を中心指標の積が二次指標の場合に拡張したことに加えて, 不変局所三重形式を構成し, それが0でない必要十分条件を局所ガンマ因子で記述した.
さらに筆者とMing-Lun HsiehはHilbert-Eisenstein級数の対角制限を計算して, あるp進L関数の微分値とStark-Heegner点のp進対数の関係式を導いた. この研究はDarmon, Pozzi, Vonkの最近の研究の一般化である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

筆者は今年度に, 台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授と以下の研究を行なった。
(1) 三重積p進L関数の例外零点の解析
(2) 市野公式の拡張
(3) ヒルベルト-アイゼンシュタイン級数の制限とp進L関数, Stark-Heegner点の研究
以上により本年度の研究は、概ね順調に進展したと言って良いと思う。

今後の研究の推進方策

市野公式はGross-Prasad予想の特別な場合であり, Gross-Prasad予想は, 自己双対的な保形表現のL関数の中心値と周期と呼ばれるモジュラー形式の積分の関係式であり, 活発に研究され、様々な応用が研究されている. 筆者の市野公式の拡張は, 自己双対的でない保形表現を扱い, 局所理論ではイプシロン因子の代わりにガンマ因子が現れるなど新しい特徴を持っている. この公式の応用や高次元化を考えてみたい. そのために興味深い具体例を探すことから始める予定である.
三重積p進L関数や様々なp進L関数に関しても, 円分微分値や重さ微分値を対角サイクルなどの幾何学的観点から研究を進めたい.

次年度使用額が生じた理由

2019年度南部陽一郎記念若手奨励賞を受賞したので、その副賞として研究奨励費50万円を授与された。この研究奨励費で研究集会を主催したり、海外からの訪問者もあり、筆者自身は主として国内で研究を進めた。このため海外出張は控えられ、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] 台湾国立大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      台湾国立大学
  • [雑誌論文] On the lifting of Hilbert cusp forms to Hilbert-Siegel cusp forms2020

    • 著者名/発表者名
      Ikeda Tamotsu, Shunsuke Yamana
    • 雑誌名

      Annales scientifiques de l'ecole normale superieure

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] On the lifting of Hilbert cusp forms to Hilbert-Hermitian cusp forms2020

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 雑誌名

      Transactions of the American Mathematical Society

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Degenerate principal series and Langlands classification2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 雑誌名

      Contemporary Mathematics

      巻: 732 ページ: 275-286

    • DOI

      https://doi.org/10.1090/conm/732

    • 査読あり
  • [学会発表] On exceptional zeros of p-adic L-functions2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      第六回京都保型形式研究集会
    • 招待講演
  • [学会発表] On central derivatives of triple product p-adic L-functions2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      Iwasawa2019,
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Seesaw dual pairs and theta correspondence I, II2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      CMC special weeks on number theory
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] A twisted Ichino formula2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      南大阪保型表現セミナー
  • [学会発表] p進L関数の例外零点2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      RIMS共同研究(公開型)「代数的整数論とその周辺」
  • [学会発表] On central derivatives of triple product p-adic L-functions2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Yamana
    • 学会等名
      Modular Forms
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] http://syamana.sub.jp

  • [備考] http://syamana.sub.jp/RIMS.html

  • [学会・シンポジウム開催] RIMS共同研究(公開型)「保型形式とL関数の解析的, 幾何的, p進的研究」2020

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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