研究実績の概要 |
p進L関数の補間公式は, 複素L関数とp進L関数の値のズレを測る修正項を伴っている. 興味深いことに, この修正項が関数等式の中心において零点を持つことがある. このとき(複素L関数の中心値が0でなくても)p進L関数の中心値は0になってしまう. このような零点は例外零点と呼ばれている. 楕円曲線のp進L関数が例外零点を持つには, pで分裂乗法的還元を持つことが必要かつ十分である. このときのp進L関数の微分値と複素L関数の中心値の関係式が, Mazur-Tate-Teitelbaumに予想され, 肥田理論を使ってGreenberg-Stevensに証明された. 昨年度に台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授と筆者は, 3つの楕円モジュラー形式の肥田族に付随する4変数の(分裂)三重積p進L関数を構成し, 3つのp通常有理楕円曲線に付随する階数8のモチーフの円分p進L関数の例外零点を研究した. 本年度に筆者は, 捻り三重積L関数の積分表示をp進化し, ヒルベルトモジュラー形式の肥田理論を用いて, 有理数体と実二次体上のモジュラー形式の肥田族の組に対して, 重さ二変数に円分変数を加えた三変数捻り三重積p進L関数を構成した. 応用として, 有理数体と実二次体上のp通常的楕円曲線の組に関する階数8のモチーフの円分p進L関数の例外零点を研究した. モジュラー形式の2次基底変換にこの構成を適用して得られたp進L関数を分解して, p通常有理楕円曲線に付随する階数6のモチーフの円分p進L関数の例外零点も研究した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度, 筆者は有理数体と実二次体上のp通常的楕円曲線の組に付随する捻り三重積p進L関数を構成し, 例外零点を持つときの円分変数に関する微分値を計算した. この例外零点は複素L関数とp進L関数の関数等式の符号がずれる場合に発生する. 複素L関数の関数等式の符号が-1であるとき, p進L関数は例外でない零点を関数等式の中心で持つ. 3つの有理楕円曲線に付随する(分裂)三重積複素L関数の複素変数に関する微分値は, 対角サイクルの複素高さと関係がShou-Wu Zangらに研究された. そのp進類似の円分変数に関する微分値は, 複素L関数の微分値とかなり異なった対象だが, 対角サイクルのp進高さに関係するという類似が予想されている. 捻り三重積L関数の複素変数に関する微分値や円分変数に関する微分値は, 予想としても定式化されていないが, Yifeng Liの研究よりHirzebruch-Zagerのサイクルが関係すると予想される. 筆者は(分裂)三重積p進L関数や捻り三重積p進L関数の円分変数に関する微分値の研究を継続するとともに、さらに多くのp進L関数を構成して, その例外零点やp進微分値の研究を進めて, 幾何的な応用を目指したい.
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