研究課題/領域番号 |
18K03211
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山木 壱彦 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (80402973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非アルキメデス的幾何 / ベルコビッチ空間 / トロピカル幾何 / アラケロフ幾何 |
研究実績の概要 |
アラケロフ幾何では,代数体上の対象に対し,そのアルキメデス的素点における複素解析空間上の対象に計量を入れて考えることにより「コンパクト化」し,代数幾何的手法のみならず微分幾何的・函数解析的手法を使って算術幾何を展開する.アルキメデス的素点には複素解析空間が付随しているという視点から非アルキメデス的素点上の幾何的対象を見直すと,非アルキメデス的素点上にはベルコビッチ空間が付随している.この観点から,アラケロフ幾何において非アルキメデス的解析空間,すなわちベルコビッチ空間の幾何を研究することは重要な位置を占める.本研究課題においては,このベルコビッチ空間の幾何的研究を通して,アラケロフ幾何への応用を目的の一つとしている. 本研究課題の目的を達するために,当面はベルコビッチ空間の幾何的側面の研究が重要となるが,ベルコビッチ空間の空間としての複雑さはしばしば困難を引き起こす.そのことは,空間としてのベルコビッチ空間は「無限に繁茂した多面体的複体」のような形をしているため,その情報を明示的に取り出しにくい点に因ることが多い. そこで有力となる方法が,トロピカル化と呼ばれるトロピカル多様体を考察することである.トロピカル多様体とは,空間としては多面体的複体の構造をもった位相空間で,トロピカル化とはベルコビッチ空間の「無限に繁茂した」構造を有限の多面体的複体構造で近似するものと考えられている.したがって,トロピカル幾何の研究は本研究において重要な足場となる. 当該年度において,トーリック多様体のトロピカル化,すなわちトロピカルトーリック多様体とその因子の研究を詳細に行った.この研究は,今後より一般のトロピカル多様体の因子の研究を行う上で重要な考察となる.また,トーリク多様体におけるアラケロフ幾何の研究を進展させるたみにも重要な基礎を与えるものと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究はトロピカル多様体に対する幾何的なものであった.ベルコビッチ空間への適用は次年度以降の課題として残っているが,トロピカル多様体の幾何の考察は深いところまで進めることができた.特に,トーリックな場合の研究は進んでおり,トーリックアラケロフ幾何への応用を考えた場合,順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
トーリックとは限らないトロピカル多様体の幾何の研究は直近の課題である.また,ベルコビッチ空間における計量の研究を推進するためにも,トロピカル多様体における計量の研究を次年度は進めていくことを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせ相手との都合で、2月上旬に予定していた国外出張を3月末から4月初めにかけてに延期したため。なお、次年度使用額はこの3月末から4月初めの出張で使用する。
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