研究課題/領域番号 |
18K03211
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山木 壱彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80402973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トロピカル幾何 / ベルコビッチ空間 / 非アルキメデス的幾何 / 幾何的ボゴモロフ予想 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、主に次の二点について研究した。 一つ目は、トロピカル幾何の研究、特にその基礎づけに関する研究である。トロピカル幾何の主対象は区分的線型な多面体的対象という、比較的初等的なものである。しかし、その初等的対象であるということから、数学の多くの研究領域と密接に関わりながら発展してきている。そして、現在、隣接分野に多くの応用をもたらしながら大きく発展しつつある分野である。申請者は元々は算術幾何的課題に興味をもって研究を続けていたが、その研究の過程でトロピカル幾何の重要性に触れ、そのことが研究の動機づけとなった。ところで、上述したように、トロピカル幾何は多方面に応用がありつつも、その幾何学としての基礎づけは不十分な状況にある。こうした背景から、トロピカル幾何の基礎づけの研究に興味をもち、その研究に取り組んだ。研究の指針は、非アルキメデス的解析幾何、特にベルコビッチ空間の枠組みからの再考である。その考察により、当該年度終盤において、トロピカル幾何の基礎づけの方向性が明確なものとなった。 二つ目は、幾何的ボゴモロフ予想についての研究であった。当該年度は上記のトロピカル幾何に軸足を置いて研究を進めてはいたものの、当予想についても時折考察を続けていた。そんな中、当該年度半ば頃に、Gao--Yuanの論文によって予想は最終的な形で解決されるに至り、本課題は決着を見たことになる。ただし、彼らの証明をよく見ると、新たに興味深い話題も見えてくる。当該年度においては、こうして見えてきた新たな課題について精査した。 当該年度の研究において、多くの考察を積み重ねて研究課題の解決に向けた方向性は明確になったものの、明確な形で解答を提示するには至っていない。次年度の研究活動においては、これまでの膨大な考察をまとめ上げ、論文という形で公開することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の影響によって延期されていた研究集会のうち、開催されたものがあったものの、最終的に中止となったものも多数あった。その結果、予定していた情報収集に遅れが生じた。また、当該年度当初に予定していた研究打ち合わせにも支障が生じ、共同研究者との打ち合わせに遅れがでた。その結果、当初の想定より時間がかかっている。 しかしながら、当該年度最終版においては状況は幾分改善し、遅れも少しずつ取り戻しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
延期されていた研究集会のオンライン開催が決まり、その機会を通じて情報収集およびオンラインでの議論が可能となった。これにより遅れを取り戻すことができ、研究課題において当初予定していた進展が望める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外出張を計画していたものの、Covid19およびそれに対する国の施策により、国外出張が事実上不可能となりそのための予算が未使用として残った。また、当初想定されていた国内での研究集会や学会も開催を(対面での)見合わすこととなり、そのための予算が未使用として残った。 次年度は、Covid19に対する施策も変化する兆しが見え、国外出張も実際に可能となることが期待される。また、国内の出張・打つ合わせも平常化する兆しが見える。よって、それらの経費として当該経費を使用することが十分見込まれる。
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