ヘッケ代数はリー理論において重要な位置を占める有限次元代数である。本研究課題申請当初から計画していた古典型ヘッケ代数の順表現型ブロック代数の分類に関して、前年度までに基礎体である代数閉体が2と異なるという仮定のもとで完全に分類することができたが、この成果が本年度オーストラリア数学会雑誌に出版された。他方、近年急速に発展しているタウ傾理論のヘッケ代数への応用についてはなかなか成功しなかったが、本年度意味のある進展があった。研究対象のヘッケ代数はA型ヘッケ代数に限り、またタウ傾理論の応用に関する最初の問としてブロック代数がタウ傾有限かタウ傾無限かについての判別問題を扱った。タウ傾理論によりタウ傾無限であることとシューア加群の同型類の個数が無限であることが同値である。しかしブロック代数の表現型の決定とは異なり、シューア加群やタウ傾加群という性質が誘導関手との相性が良くないので種々の困難があったが、次数付分解係数を用いたアプローチを発見し部分的な結果を得た。ヘッケ代数のブロック代数はコア分割と呼ばれるヤング図形と重みと呼ばれる自然数で分類されるが、重みが2や3のときこの手法はとくに有効である。ただし例外的な場合には従来タウ傾理論で使われてきた手法を用いて解決する必要がある。そこで、タウ傾理論で使われてきたタウ傾有限性の判定方法に関する知見を得るために、1月にExamples of tau-tilting finiteness/infiniteness という小集会を開き、いままでに得られている種々の手法についてタウ傾理論の専門家に発表してもらった。参加者にとってもタウ傾理論を具体的な代数に適用する場合の手法の整理が有用であったと思われる。
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