研究実績の概要 |
「有限群上の差集合」の一般化についての研究を行った。有限群はassociation schemeの特殊な場合と考えられる。さらに、association schemeを一般化し、regular unital relation partitionの概念を導入した。これは有限集合XおよびIと全射R:X×X→Iの組であって、Iの一点i_0のRによる逆像がXの恒等関係を与え、また任意のi∈Iの逆像に対し、それが与えるXの二項関係が一対k_iとなるような整数k_iが存在するものを指す。X上の非負整数値関数fであって、「R(x,y)=iとなるようなすべての(x,y)∈X×Xにわたるf(x)f(y)/k_iの和」がi≠i_0である限りiに依存しないとき、fを(X,R,I)の等分布関数と呼ぶ。有限群Gからregular unital relation partition G×G→G (g,h)→g^{-1}hが得られるが、古典的な意味でY⊂Gが差集合であることと、Yの特性関数がこのregular unital relation partitionにおいて等分布関数であることとが同値であることを示した。この一般化により、次の定理が証明される。 定理:X,X'をregular unital relation partitionとし、f:X→X'を全射準同型とする。このとき、Xにおける等分布関数のfによる押し出しは、X'の等分布関数となる。 この定理の応用として、非自明差集合の存在が明らかでなかった位数120の二つの可解群について、非存在を証明することができた。先行研究では、これらの群Gに対し1から始まる増大する正規部分群の列を考え、対応する減少する商群の列を考え、小さい商群から帰納的に等分布関数を探索していたが、上記手法により正規とは限らない部分群列にこの探索を行うことで結果を得た。
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