研究課題/領域番号 |
18K03214
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
鍋島 克輔 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (00572629)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | b-関数 / 特異点 / グレブナー基底 / 代数的局所コホモロジー |
研究実績の概要 |
局所環での次元判定,対数的ベクトル場,対数的微分形式,integral dependece relationの一般化と半擬斉次特異点の性質を利用した局所 b-関数 (Bernstein-佐藤多項式) 計算アルゴリズムの構成が実現できた.また,本研究課題の鍵となる代数的局所コホモロジーの性質について,ボーダー基底で記述可能であることがわかり,代数的局所コホモロジーとボーダー基底の関係性についても進捗があった. 局所環での点での次元判定は,大域環での飽和イデアル計算と同等であることを示し,局所環での計算を行わず大域環で計算する方法を構築した.また,スタンダード基底計算との比較も行い,問題によっては多大に効率がよいことがわかった.対数的ベクトル場と対数的微分形式の構成は,前年度までの先行研究を改良することによりより良いものが構成できた.integral dependece relationの一般化と計算法の確立もでき,これは局所 b-関数計算のみならず,対関係にあるGauss-Manin connection の構成にも役に立つものとなっている. 本研究課題での主目的は,半擬斉次特異点の性質を利用した局所 b-関数の構成である.integral dependece relationの一般化と,局所環でのイデアルメンバーシップ問題の効率化,前年度までに構築したホロノミック系に付随する代数的局所コホモロジー計算を組み合わせることにより,念願の局所 b-関数計算アルゴリズが構成できた.計算法は計算機代数システム Risa/Asir 実装した.この実装と Risa/Asir が持つ局所 b-関数計算プログラムの比較では,本研究で得られた計算法が圧倒的に効率的であることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題での主目的は,半擬斉次特異点の性質を利用した局所 b-関数の構成である.1970年代に職人技のように多くの技巧をこらして手計算で行われていた局所 b-関数計算の方法を,現在の計算代数の観点から再構築することである.計算法に必要となる道具は2018年度と2019年度に本研究課題内で構成できており,主目的である局所 b-関数の計算法も2019年度に一通り完成した.計算効率を考慮した更なる改良は必要であるが現時点で,計算機代数システムRisa/Asir が持つ局所 b-関数計算プログラムより効率が良いことが確かめられている.当初の計画通りに進んでおり「おおむね順調」である. 本研究に付随する研究課題も,大いに進展がみられ,対数的ベクトル場,対数的微分形式の構成法の確立もされた.
|
今後の研究の推進方策 |
半擬斉次特異点の性質を利用した局所 b-関数計算の更なる効率化を図ると共に,パラメータの付随したものでも計算できるように拡張を行う. 特異点変形において解析的不変量である局所 b-関数がどのように変化するのかを分類することが本研究課題の最終的な目的である.現在の非可換包括的グレブナー基底系計算プログラムでは,modality 3以上の特異点の ann(f^s) 計算に要する時間は3か月以上である.このことから,新しい計算法が渇望されている.そこで,本研究で得られた新しい計算法をパラメータの付随したものに拡張することにより,特異点変形に対応する計算が可能となる.今後の目標の1つ目は,前年度までに得られた計算法をパラメータ版に拡張することである.2つ目は,それを用いて特異点変形で生じた分類の記述をできるだけ計算することである.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に必要な旅費は予定より少額になったため,次年度使用額が生じた.次年度の旅費と合わせて使用する予定である.
|