研究課題/領域番号 |
18K03215
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
境 優一 九州大学, 多重ゼータ研究センター, 学術研究員 (10815567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保型線形微分方程式 / モジュラー形式 / 準モジュラー形式 / 頂点作用素代数 / 指標関数 / 志村曲線 / 量子次元 / ベクトル値モジュラー形式 |
研究実績の概要 |
本年度は,保型線形微分方程式を整数論の観点から考察および注力したこととして,cocompactな(カスプを持たない)群の上での保型線形微分方程式を考察した.特に,モジュラー群上の保型線形微分方程式としてよく知られているKaneko-Zagier方程式の構成方法に倣って,関数空間上での自己準同型写像として解釈できるものを構成した.さらに,この保型線形微分方程式の解として現れるモジュラー形式が,Elkiesにより導出された志村曲線上の超得意多項式との合同関係を持つことを示した. また,永友清和氏(大阪大学)とD. Zagier氏(MPI)と共同研究として実施している一般化した保型線形微分方程式に関する研究は,保型線形微分方程式に関する必要十分条件を再構築した.特に,微分作用素の観点から考察を行い,Rankin-Cohen括弧積に関する代数として記述できることを確認した. また,頂点作用素代数(VOA)の指標関数に関して,昨年度より継続研究であったVOAのV_1空間における次元が8あるいは16であり,かつ,指標の張る空間が3次元となる場合について,中心電荷や共形ウェイトに関して条件付けを行うことで,量子次元(quantum dimension)や大域次元(global dimension)の計算から非同型な加群の個数も含めたVOAの存在の可能性を考察可能とした.これは大阪大学・永友清和氏と東北大学・島倉裕樹氏,華東師範大学・X. Jiao氏との共同研究である.この量子次元や大域次元の計算は,モジュラー形式の理論に基づく計算が重要な値を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年2月ごろ以降,新型コロナ肺炎の世界的感染拡大により,大学への入校規制や,国内および国外への移動が制限される状況が長期間続いた. そのため,研究代表者の研究環境が十分に整わず,また,共同研究者との意見交換も十分に行えない状況であった.
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今後の研究の推進方策 |
今後について,継続して行っているそれぞれの研究についてのまとめを行い,これら結果を論文化や研究発表を行い,研究成果を公表を行う.また,保型線形微分方程式を表現論の視点から考察を行う.また,具体的数値実験等を行いつつ,保型線形微分方程式と準モジュラー形式との関係性(解として現れる条件など)について特徴づけを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ肺炎の世界的感染拡大によって,今年度において参加予定であった国内および国外への研究集会や研究打ち合わせなど大多数が中止または次年度以降に延期となった. 翌年度への持ち越し金について,新型コロナ肺炎の感染拡大の状況により変化する可能性はあるが,研究集会の参加や研究打ち合わせ実施において,通常移動が可能なものについては参加し,また,通信環境を拡充しオンライン形式等の選択肢のみものにも参加できるよう整備する.これらの対応策により今年度実施不可能であったことを含め,本事業の使用計画においての範疇で適切に使用できる見込みである.
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