研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本年度も端末商特異点をもつ射影直線上の次数1のdel Pezzo曲面束の双有理剛性に関する研究を行った。昨年度は1/2(1,1,1)型特異点のみを持つ場合を考察し、その場合に双有理剛性を有するための十分条件を与えた。本年度は、1/3(1,1,1)型特異点も許容するより一般的な状況について同趣旨の研究を行った。技術的には、極大特異部分多様体と呼ばれる特定の性質を持つ部分多様体の存在を除去していくことが必要であるが、この部分で着実に研究を前進させているが、まだ解決には至っていない。1/2(1,1,1)型特異点のみを持つ場合との重要な違いとして、1/3(1,1,2)型特異点を持つ場合はその特異点を起点として異なる次数1のdel Pezzo曲面束への双有理写像が構成されることにある。つまり、双有理同値類の中に異なるモデルが複数個構成され、各モデルに関して研究を行わなければいけないことに困難が生じている。次年度以降はこの課題に挑戦したい。
(ピカール数1の)ファノ多様体が双有理剛性を有すればK安定的であろう、という予想がある。本年度は、95族からなる(指数1の)3次元ファノ重み付き超曲面に対して上述の予想を検証する研究をKim氏、Won氏と共同で行った。現段階では完全には完了していないが、多くの族に対してその族に属するメンバーが双有理超剛性を有するならばアルファ指数が1/2以上であることを示すことを経由することでK安定的でとなることを示した。次年度には全95族に対して完成させたいと考えている。
|