研究課題/領域番号 |
18K03223
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
中筋 麻貴 上智大学, 理工学部, 准教授 (30609871)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Schur多重ゼータ関数 / Pieri規則 |
研究実績の概要 |
Euler-Zagier型多重ゼータ関数の組合せ論的拡張であるSchur多重ゼータ関数について,その性質を追求する研究を進めている. 本年度の研究実績としては,昨年度取り組んだLie代数と関係する「ルート系のゼータ関数」と,Schur多重ゼータ関数との関係解明における松本耕二氏(名古屋大学)との共同研究を投稿し掲載に至ることができた.また本研究をイギリスBristol大学にて講演した. また,Schur型多重対数級数の性質解明の研究において,その偏微分の帰納的な明示をhook型に限定した場合において結果を得ていたが,hook型の特別な場合である(n)型,(1^n)型の場合に問題が生じることが明らかになっていた.これに対し,条件を付加することにより問題を回避することに成功した. さらに,武田渉氏(名古屋大学)との共同研究において,Schur関数の研究において知られているLittlewood-Richardson規則のSchur多重ゼータ関数への適用について研究を始動した.Schur多重ゼータ関数におけるLittlewood-Richardson規則の類似の研究は,研究実施計画の中核となっている重要項目である.これに対し,具体的には,Littlewood-Richardson規則の特別な場合であるPieri規則について考察し,数式処理ソフトSageを用いて試行を繰り返してある種の予想式を得た.さらに,hook型のSchur多重ゼータ関数について予想式を証明することに成功した.また,本研究の過程において,従来研究のJacobi-Trudi公式に対する一般化の一部を得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,オリジナルのEuler-Zagier型多重ゼータ関数やSchur関数の理論で成立していた事柄の類似や拡張が,Schur多重ゼータ関数について成り立つかどうかを検証し,そこから多重ゼータ関数の性質や関数間の新しい関係式を得ることを研究目的の1つとしている.これに対し,Schur関数におけるPieri規則が,特別な場合のSchur多重ゼータ関数について成立することが判明し,その成果を論文にまとめる作業に入ったところである.これにより本年度の研究目的は順調に達成したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
Schur多重ゼータ関数の性質の解明について,引き続き取り組んでゆく. 特に一般のSchur多重関数に対するPieri規則や特殊値の考察に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により,国内外の研究集会での研究成果発表が中止,またはオンライン開催となった.この結果生じた次年度使用額については,状況が整えば,研究打ち合わせにかかる旅費として用いる予定であるが,状況によっては遠隔での研究打合せをより円滑に行うための通信機器等の購入に用いる予定である.
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