研究実績の概要 |
最近, 呼子笛太郎は正標数の完全体上のCalabi-Yau多様体に対し, 新概念「擬分裂高さ」を定義し,擬分裂高さが有限ならば, 長さ2のWitt環に持ち上がることを示した. その系として, この多様体のホッジドラームスペクトル系列がE_1退化することを示した. さらに, 擬分裂高さと上記多様体の基本的不変量であるArtin-Mazur高さが等しいことを示した. したがって, Artin-Mazur高さが有限なCalabi-Yau多様体のホッジドラームスペクトル系列はE_1退化するという興味深い結果を呼子は得た. 本研究者はこの結果の対数化を試み, 正標数の完全体上の対数点上の対数Calabi-Yau多様体を定義し, この多様体に対し, 上記結果の対数版をすべて証明し, 呼子氏と共同でプレプリントを作成し, 某雑誌に投稿した. この結果を得るため, 幾何的手法で中核をなすNori-Srinivasのフロベニウス付き変形理論の対数版の理論を構成した。また, 対数クリスタルコホモロジーに対する対数弱Lefschetz予想も定式化し, 部分的な結果も得た. さらに, 固有対数的に滑らかでCartier型の対数多様体に対し, 擬分裂高さが有限ならば, Witt-sheafのコホモロジー は有限生成であることを示した. この結果はJoshi教授のF-split多様体のWitt-sheafのコホモロジーの有限性に関する結果の対数多様体に対する拡張であり, また、擬分裂高さが有限に対する2重の意味での拡張である. その証明の過程で、Artin-Mazur高さと擬分裂高さとの間の不等式が存在することを示した. この結果は予想すらされていなかった意外な結果である. さらに, 有限体上の対数Calabi-Yau多様体の有理点の個数に関する合同式も予想以上の結果も証明できた.
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