研究実績の概要 |
2020年度に本研究の主目的となる論文「Derived PD-Hirsch extensions of filtered crystalline complexes and filtered crysalline dga’s」を一度書き上げて, arxivに公表した(155ページ).あとはこの論文を何度も推敲して, 雑誌に投稿して, アクセプトされることを目指す. 本研究者は別の論文で, 対数点のファミリー上の固有半安定対数多様体の対数クリスタルコホモロジーの重みを計算する, フィルトレーション付き複体(A,P)を構成していた. (Aは複体, Pはフィルトレーションを表す.) (A,P)から得られる対数クリスタルコホモロジーHの重みフィルトレーションと積構造との両立性を上記155ページの論文で示した. Aには自然な積構造がないので, これを示すために, 基本的なフィルトレーション付き複体(C,P)を構成した. さらに, (C,P)の余半単体化(C^s,P)を構成し, (A,P)の余半単体化である(A^s,P)を構成した. さらに, (A,P), (A^s,P), (C^s,P)と用いたHの3つのフィルトレーションが一致することを示した. 本研究の二つ目の研究目的についても, 目標としていた最終結果を得た. 呼子笛太郎氏は正標数の完全体上のCalabi-Yau多様体に対し, 「擬分裂高さ」を定義し,その高さが有限ならば, 長さ2のWitt環上に持ち上がることを示した. 本研究者は, 呼子氏と共同でこの結果の対数化を試み, 正標数の完全体上の対数点上の対数Calabi-Yau多様体を定義し, この多様体に対し, 上記結果の対数版を証明し, さらに小平消滅定理を証明し, プレプリントを作成し, 某雑誌に投稿し,些細な修正を依頼され,アクセプトまで後一歩のところまで来ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主たる目的,第2の主目的も順調に運んでいて, 全て目指していた結果を得たので, ,ここでは言及しないことにする. ここでは予想外に研究が進んだ結果について,言及したい. 主目的でクリスタルの枠組みで, dga(=differential grade algebra)のHirsch拡大が(C^s,P)の構成に決定的な役割を果たしたが, このHirsch拡大を基礎体が複素数体の場合に適応し,以前に構成したフィルタード複体の導来圏の一般理論を使って,藤沢太郎氏の対数多様体に対するホッジ理論の結果をより徹底した形で, しかも簡明な証明法で彼の結果を得,さらに係数の場合に拡張した. また, 山田一輝氏の兵藤加藤同型の構成のアイデアを基礎体が複数体の場合に適応し, Steenbrinkの非標準同型射を適当な多項式環とテンソル積をとることによって, 標準的同型にできることを示した. 当初は期待してなかった, 上記二つの結果を得ることになった.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響のため, 全ての研究集会の現地開催が中止となり, 全ての会議が中止あるいはオンライン開催になったため、出張が皆無になったので. 次年度使用額が生じた. また, 東北大学の都築暢夫教授の共同研究者としての研究費を使用したため, 次年度使用額が生じた. 使用計画に関しては,コロナウィルス感染拡大の状況に大きく左右されることと思うが, もし, ワクチン接種が進み, 研究集会が現地開催されれば、積極的に参加し, 研究費を有効に使用したい.
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