研究課題/領域番号 |
18K03225
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平田 典子 (河野典子) 日本大学, 理工学部, 教授 (90215195)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数論的近似 / 超一様分布 / 一様分布 / Pade近似 / ディオファントス近似 / 対数一次形式 / 暗号原理 / 超越数 |
研究実績の概要 |
代数的数の自然対数もしくは関連値の代数体上の一次独立性を従えるための十分条件の明示化と先行研究の改良,およびそのときの自然対数の代数的係数一次結合の附値の下からの評価である,いわゆる対数一次形式に関し,先行研究を凌駕する評価を得ることができた.この成果についてはフランスLuminyにあるCIRM数学研究所におけるDiophantine Approximation & Transcendence研究集会において,2018年9月に基調招待講演にて発表した.超一様分布数列に関する近似・Pade近似・超越数論におけるディオファントス近似などの優れた処を取り入れた数論的な近似を駆使して得た成果である.また本成果のp進版については先に結果を得ており,オランダLeiden大学で開催された研究集会において,共同研究者である大阪大学研究員の川島誠氏に,研究代表者に代わり2018年6月に招待講演者として講演してもらった.以上は論文として急ぎ投稿予定である.研究課題に標榜した予想および多くの不定方程式に関する応用についての探求を引き続き進める.上記以外にも数論的近似を用いてG. PolyaおよびCh. Pisot の著名な成果である,自然数で整数値をとるような整関数が多項式に限るための条件の一般化を古津博俊氏との共同研究成果として獲得し,査読付雑誌に1本出版した.また応用数理的な本研究の活用として,多項式写像に基づく暗号原理に関する新しい方式を提案したものを,秋山浩一郎氏,伊藤勝氏,中村周平氏との共著論文として投稿し,査読付雑誌への出版が確定した.これら以外にも一様分布に関する数学教育に対する提案としての講演をまとめたものを京都大学数理解析研究所講究録(査読なし)その他に出版した.サーベイ論文として数論的近似の最近の進展に関する内容も,あわせてアメリカ数学会の雑誌に投稿し,出版予定になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超一様数列・一様分布数列とは擬似乱数の発生などにも応用されるような,Discrepancyつまり「くいちがい度」の低い数列のことを指す.これはディオファントス近似における重要な概念である.また数の性質を見極めるために有用な,Pade近似および超越数論における対数一次形式の近似とも深く関連する.これらの全てをいわば組み合わせ,それぞれの良い処を活かせるようなハイブリッド型の数論的近似を考察することによって,数論における重要な問題,たとえば「積分などの意味ある表示を持つ周期は,すべて超越数」という言葉で総括し得るKontsevich-Zagier 周期予想の構造を明らかにすることが,本研究課題の主目的である.このうち特にその中心的な問題である対数一次形式を,様々な側面から俯瞰したこと,またいくつかの古典的な手法を詳しく吟味したこと,そして海外共同研究者S. David, Y. Bugeaud,国内共同研究者 川島誠氏らとの密な研究討議を繰り返し実施したことによって,新たな成果を得ることができた.2018年度に研究代表者は査読付雑誌への出版確定を含む5本の出版および,海外での研究集会における招待講演・基調講演を含む4回の研究発表,日本数学会秋季総合分科会企画特別講演および海外での研究集会における座長2回,海外の研究所における国際研究集会組織委員などを務めている.これらはすべて,上記の研究活動の成果であると共に,本研究課題の科学研究費補助金のおかげであったことは言うまでもない.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,得られた成果の素早い投稿およびその拡張を実施する.そして,既に交流のある専門家との研究討議により,さらなる研究推進を実行する.2019年6月にMoscow大学およびMIPTにおいて開催の研究集会「Transcendence and Diophantine Problems, 2019年6月10~14日」に研究代表者は招聘されているが,数論的近似のメッカの場での開催であり,また研究課題に非常に近い問題の先進的研究者の集まるこの研究集会において,多くの知見を得ること,自分の成果のアピールを行うこと,そして今後の確実な成果獲得につながるような新しい局面を開拓する研究討議ができるように,講演の周到な準備を行う.この研究集会はN. I. Fel’dmanを記念する研究集会であり,ロシアのみならずヨーロッパの専門家が多く集う予定である.また一方,本研究課題においては入手しにくい古典籍に類するような過去の専門家の論文の解析を進めることも重要であり,国際研究集会への参加旅費のみならず,これらの文献収集に研究費を活用する.さらに様々な近似における数値計算の比較も重要であるため,臨時職員を半年間に雇用して,本質的な寄与を得るための地道な数値実験を実施し,課題名に掲げた「積分など意味ある表示を持つ周期は超越数」という問題の構造に対する本質的な考察をおこなう.
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