研究課題/領域番号 |
18K03227
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松岡 直之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (80440155)
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研究分担者 |
後藤 四郎 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員 (50060091)
チャン ティフン 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (00649824)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 擬ゴレンシュタイン環 / 数値半群環 / 定義イデアル / 極小自由分解 / Cohen-Macaulay環 |
研究実績の概要 |
昨年度までに,概ゴレンシュタイン数値半群環の定義イデアルに関して,その数値半群の擬フロベニウス数の挙動を指標とした解析を行い,後藤四郎氏・Do Van Kien氏・Hoang Le Truong氏らとの共同研究により成果を挙げた。この成果を精査する過程で,概ゴレンシュタインに限らない数値半群環の定義イデアルに関する予想に至り,その解析を進めた。完全な解決には至らなかったが,極大埋込次元を持つような数値半群環に対しては予想を完全に解決し,さらにはその定義イデアルのsymbolic Rees代数の有限性を確認している。予想の究明は,概ゴレンシュタイン環とそうでない環の差異を測ることにも繋がると判断され,また,数値半群環の定義イデアルの本質にも迫るものであると考えているため,今後も継続して研究を進めていく。 また,1次元の概ゴレンシュタイン環論のさらなる整備を狙い, 1変数冪級数環あるいは多項式環のコア部分環の具体例解析に着手した。コア部分環は数値半群環を自然に含む枠組みであり,数値半群環では単純すぎて見落としてしまいがちな歪みを見出すことが可能である。1次元固有の理論であったArf環論に着目し,これを一般の可換環に対する理論に拡張する弱Arf環論の創始にも取り組んでいる。また,コア部分環の解析を進める過程で,その整閉イデアルの具体的な生成系の計算方法を遠藤直樹氏・後藤四郎氏・山本裕樹氏らと生み出すにも至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ゴレンシュタイン環論を,1次元の解析を軸にしながら発展させる営みは順調に進んでいるが,2020年度に参加を予定していた研究集会が軒並み中止となり,また,主催を計画していた第42回可換環論シンポジウムの中止と,そこへ招聘を予定していた海外研究者らとの議論の場を失ってしまったことは大きな痛手であったと考える。特に,数値半群研究の中心的な役割を担うPedro Garcia-Sanchez氏との議論には,本研究の展開への寄与を期待していたため,中止せざるを得なかった影響は非常に大きい。
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今後の研究の推進方策 |
コア部分環には,多くの課題が残されている。例えば,そもそもいかなる環がコア部分環であるか,という問いすらも,十分には解明されていない。概ゴレンシュタイン性と,現在進行中である弱Arf環論の整備を念頭に置きながら,コア部分環の具体例解析によって顕在する本質的な構造を捉え,理論へと昇華していく。また,昨年度は中止せざるを得なかった研究集会も,オンラインあるいは対面とオンラインの併用による開催も視野に入れながら開催を目指す。オンラインであっても,あるいはオンラインであるからこそ実現できるような研究の場を模索し,新たな時代の研究方法を確立していくことも,研究の遂行と同時に考えていくべき課題であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の用途の大半は,研究出張あるいは海外からの研究者招聘に充てる予定であった。しかし,コロナ禍により参加予定の研究集会はすべて中止となり,もちろん海外から研究者を招聘することも叶わなかった。 コロナ禍の終息後も,オンラインを用いたセミナーや研究集会はひとつの研究の場として残ることが予想される。昨年度にも1回オンライン研究集会を主催し,今年度はすでに2回の研究集会の開催を予定している。また,定期的な研究のセミナーを共同研究者らと継続している。これらの経験を通じて,オンラインの強みを活かした研究の場を生み出すことを考え,それに必要な機材の検討と購入を進める計画である。
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