研究課題/領域番号 |
18K03228
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
米田 二良 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90162065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数値半群 / ワイエルシュトラス半群 / 代数曲線 / K3曲面 / トーリック曲面 / ガロア直線 / 二重被覆 / 三重被覆 |
研究実績の概要 |
7月に、重み付き射影平面の2重被覆であるK3曲面上の代数曲線のワイエルシュトラス半群についての共著の査読付き論文が出版された。9月に、6次平面代数曲線の接線との接触度が5である点で分岐する二重被覆の分岐点のワイエルシュトラス半群についての共著の査読付き論文が出版された。3月にトーリック曲面上の代数曲線が射影直線の素数次巡回被覆になっている時の分岐点のワイエルシュトラス半群についての共著の査読付き論文が出版された。また、同じ月に代数曲線のワイエルシュトラスnormal form を使ってのヤコビの逆公式に関する共著の査読付き論文が出版された。ワイエルシュトラスでない奇数の導手を持った数値半群の無限列の構成に関する論文がRIMS講究録から10月に出版された。この結果と偶数の導手を持った場合の結果も加えた論文を3月に投稿した。7次平面代数曲線上の接線との接触度が7である点で分岐する二重被覆の分岐点のワイエルシュトラス半群についての論文を大学の紀要に投稿し、3月に出版された。 6月に「形式言語とオートマトン研究会」で、4元生成の almost symmetiric 数値半群に関するフルヴィッツの問題(数値半群がいつワイエルシュトラスか)について講演した。12月には「特異点月曜セミナー」で重み付き射影平面の2重被覆であるK3曲面上の代数曲線のワイエルシュトラス半群についての講演をした。2月には RIMS Workshop で7次平面代数曲線上の接線との接触度が7である点で分岐する二重被覆の分岐点のワイエルシュトラス半群についての講演、そして「形式言語とオートマトン研究会」で、トーリック曲面上の代数曲線では得られないワイエルシュトラス半群についての講演をした。 ガロア直線の研究や楕円K3曲面や重み付き射影平面の三重被覆のK3曲面上の代数曲線のワイエルシュトラス半群の研究も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の前半の「代数曲線のガロア被覆を通してのフルビッツの問題の解決」については、二重被覆や三重被覆で分岐点の数値半群がどのようになるかを調べて、組織的にワイエルシュトラスでないものの数値半群の無限列が作れた結果が意義がある進展だと考えられる。これに関する論文は、現在投稿中である。また、4元生成の almost symmetric 数値半群のフルビッツの問題についても最近出版された他の研究者の論文と二重被覆の分岐点の結果を一緒にすることでかなりの部分が解決されていて、その結果を研究会で発表した。また、数値半群が symmetric または pseudo-symmetric の場合の二重被覆や三重被覆を通しての特徴づけも進んでいる。 symmetric または pseudo-symmetric の次に調べる場合は、導手が種数の2倍引く2の場合であるが、この場合も、色んな結果を出している。almost symmetric 数値半群や導手が奇数の数値半群については、三重被覆の考え方を使って構成する方法を見つけている。これらはフルビッツの問題の解決に貢献するものと思われる。 研究課題の後半の「K3曲面上の曲線の研究」についても、1,1,4 の重みを持つ射影平面の二重被覆であるK3曲面上にある代数曲線上の点のワイエルシュトラス半群の計算ができ、出版された。特別な楕円K3曲面上の代数曲線についても同様の問題を考えている。K3曲面以外でもトーリック曲面について同様の問題を考え、この結果が出版された。この手法はK3曲面についても使えると考える。また、K3曲面上の代数曲線では得られないワイエルシュトラス半群のタイプを参考にしてトーリック曲面上の代数曲線では得られないワイエルシュトラス半群を求めることができた。 ガロア直線についても種数4の標準的埋め込みについて結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
導手が偶数の場合に almost symmetric のワイエルシュトラスでない数値半群の無限列を作ること。almost symmetric を仮定しない場合や導手が偶数の場合にはこの問題は解決している。4元生成の almost symmetric 数値半群のフルビッツの問題について残された場合について解決する。symmetric または pseudo-symmetric または導手が種数の2倍引く2の場合については色んなことがわかってきているので、それらをまとめながらフルビッツの問題を考えて意義のある結果を出し、一般の場合に解くためのきっかけにする。 共同研究で特別な楕円K3曲面上の代数曲線のワイエルシュトラス半群の例を計算する。そして論文としてまとめる方向で検討する。共同研究で重み付き射影平面の三重被覆であるK3曲面上の代数曲線のワイエルシュトラス半群を調べる。トーリック曲面上の代数曲線で次数が合成数である射影直線の巡回被覆になっているものの総分岐点のワイエルシュトラス半群の特徴づけをする。トーリック曲面上の代数曲線で得られないワイエルシュトラス半群の例を既に見つけているので、もっと多くのそのような例を見つけ、トーリック曲面上の代数曲線で得られないワイエルシュトラス半群の必要十分条件に近い条件を見つけて論文として著す。共同研究で、超楕円でない種数4の代数曲線の標準的埋め込みのガロア直線の本数について、ガロア被覆の次数が素数の時は解決している。次数が4と6についても部分的な結果が得られているが、残された場合に本数を決定し、論文としてまとめる。代数曲線のワイエルシュトラス normal form を通してその無限遠点のワイエルシュトラス半群がどこまで求めることができるかを調べ、それを通してフルビッツの問題について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共催した「代数曲線論シンポジウム」で、もう一人の主催者が、講演者の旅費、プロシーディングの出版費用を一手に引き受けたいとの申し出があり、そのために準備していたお金が残った。また、2月下旬から3月下旬にかけての海外出張(韓国)また国内出張(徳島、奈良、金沢等)が新型コロナウイルスの影響で取りやめになってその分の旅費を使わなかった。 今年度も「代数曲線論シンポジウム」を12月中旬以降に開催する予定で、私が主催者になり、ほとんどすべての講演者の旅費及びプロシーディングの出版費用として使用する予定でいる。 また、今年度は新型コロナウイルスの影響がどの程度であるかわからないし、いつ収まるかも予測できないので、共同研究についてはリモートでもできるような環境を整えるための費用として使いたい。また、代数曲線や数値半群の計算のために数式処理ソフトを購入する予定であり、合わせてそれを動かすための新しいコンピュータの導入についても考えていて、そのための費用に使う。 共同研究者との共同研究を6つ程抱えていて、ほとんどが論文の形に出来そうなものである。これらを形にするためには会って直接議論するのが最もいい方法だと思われるので、新型コロナウイルスの影響でどのようになるかわからないが、これらの出張の旅費等にも使えるよう費用を準備しておきたい。
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