本研究では、Siegelモジュラー形式の場合に定義される「法p特異モジュラー形式」の性質を、それと深い関わりのあるテータ作用素の核の性質と共に調べてきた。当該年度は、特に これまでの報告者による研究で提唱してきた「全ての法p特異モジュラー形式は、レベルpのテータ級数の一次結合で表されるであろう」という予想の証明を試みた。その結果以下のことを示すことができた。 (1) レベル、次数、特異階数が一般の場合に、全ての法p特異モジュラー形式は有限個の2次形式のテータ級数たちの一次結合で表される。(2) さらに、特異モジュラー形式のレベルが1の場合には、2次形式のレベルはpベキである。(3) 次数3以上、特異階数2、重さが可能なものの最小の場合には、それらの2次形式のレベルは丁度pである。 上記の証明に用いるために、以下の2点についても考察し成果が得られている。(A) Katzによって与えられたq展開原理を、レベルがpで割り切れる場合に拡張。(B) 北岡によって与えられたテータ級数の変換公式を、次数一般の場合に拡張。 以上の研究は全て、S. Boecherer氏との共同研究による成果である。
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