研究課題/領域番号 |
18K03231
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松下 大介 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90333591)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シンプレクティック / ラグランジアン / 特異点 |
研究実績の概要 |
既約シンプレクティック多様体と呼ばれるクラスの複素多様体はその構造に関しては著しい研究成果が得られている一方, その具体例は概念が提唱された1980年代から40年を経ても四種類しか知られておらず, 最後に新しいものが発見されたのが1997 年で, それから27年が経過している. 一方特異点を許したものは既約シンプレクティック多様体を構成しようとする試みの中で失敗の副産物として沢山の具体例が構成されている. これらの構成の方法は大きく分けて K3 曲面や Abel 曲面の上の捩れ自由な層のモジュライ空間として構成する, 既知のシンプレクティック多様体の自己同型群の有限部分群による商を考え, その部分的な特異点解消を取るという二つの方法がある. 23 年度にイタリアで開催した国際研究集会での講演及びその後の議論で, この二つの構成方法のうち前者は既約シンプレクティック多様体に極めて近い性質を持つ一方, 後者はかなり異なった性質を持ちうることが具体例の検証からわかった. これらの結果を基に, 特異点を持つシンプレクティック多様体で位相的な条件, コホモロジー群や基本群等, にどの程度の条件をつければ非特異の場合と同じ性質を持つのか, また条件を緩めた場合にどの程度非特異な具体例で知られている結果がそのまま成立するのか, という問題を考察し, 非特異と同じ主張が示せる位相的条件の候補と特異点があっても成立する主張を確定することが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の一つの目標は代数多様体の自己同型群から自身の構造を明らかにする, というものだった. この方向で研究を進める時に重要な概念となるのが自己同型の周期点と呼ばれる集合である. これは自己同型 σ の固定点だけでなく σ を有限回合成したものの固定点を合わせて考えたものである. 代数多様体の自己同型に対し, 周期点は空集合か, あるいは Zariski 位相で稠密となる, という予想を立て,22 年度の最後に証明が得られたと思い, 23 年度初めにあらためて証明の細部を検討した. その際, 仮定となる代数多様体の種類や自己同型写像の例をシンプレクティック多様体よりも広い範囲で検証した結果, 予想の反例が得られたわけではないが, 証明の一部に瑕疵があることが 6 月頃に判明した. そこで証明の修正を得るために具体的な例について非特異なシンプレクティック多様体だけでなく, 特異点を持ったシンプレクティック多様体の自己同型を考察したが, 現在まで証明の瑕疵を埋められていない. このような場合, 具体例で得られた知見を論文等の形にまとめて発表することを試みるべきだったが, コロナ禍の直後で研究集会等がオンラインから対面に回復する途中だったため, 国内外の他の研究者と交流に制限があり, 当該分野の研究の関心がどこにあるのかはっきりと掴めなかったため, まとめる方針が定まらず, 論文等にすることが出来なかった.
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今後の研究の推進方策 |
二つのテーマに沿って進める. 一つ目は周期点の性質を明らかにするというもので, 予想として代数多様体の自己同型の位数が無限, すなわち何回合成しても恒等写像にならずエントロピーと呼ばれる量が 0 ならば, その周期点は空集合または Zariski 位相で稠密となる, を立てているが, 現時点では周期点が空集合でなければ有限個の点集合にならない, という主張ですら, K3 曲面を除く知られている非特異なシンプレクティック多様体に限っても未解決である. そこで周期点は無限個の点からなる, というう事を主に局所的な場合と具体例の考察によって調べる. もう一つは特異点がある場合にどのように非特異なシンプレクティック多様体で知られている結果が拡張されるか, というテーマである. 既に先行研究により大域的トレリ型定理が成立することが知られており, 自己同型群についてはほとんど非特異な場合と同じことが成立する. これを活かして, 既に得た非特異な場合と同じ主張が成立する位相的条件の候補を検証したい. また, 具体例, 特に既知の非特異なシンプレクティック多様体の自己同型群の有限部分群による商の部分的な特異点の解消によって得られるもので非特異とは色々と異なる現象が観察されているが, これらが位相的な条件から説明出来るかを調べたい. なお, 7 月に北海道大学で主として国内の研究者を集めて, 9 月に京都大学で国際的な研究集会を開催し, 国内外の研究動向を探ると共に, 研究交流を進めるつもりである.
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次年度使用額が生じた理由 |
イタリアでの研究集会で主として日本側からの講演者の旅費に充てるつもりだったが, 招聘した研究者が各自の研究費を使用したため余剰が生じた. 今年度は 9 月に京都大学で国際研究集会の開催を予定しており, 海外からの招聘者の滞在費に使用することを考えている.
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