研究課題/領域番号 |
18K03232
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山崎 隆雄 東北大学, 理学研究科, 教授 (00312794)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数論幾何 / 整数論 / 代数幾何 / 代数学 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は大きく二つに分けられる。 Deligneによる混合Hodge構造は代数幾何のあらゆる分野で用いられる基礎理論である。BlochとSrinivasはこの理論に拡張の余地があることを指摘し、enriched Hodge 構造の理論を提唱したが、その理論は双対性を持たないなどの理由でさらなる拡張がなされるべきであると述べていた。実際、Barbieri-Viale、加藤、Russellなどによる先行研究でレベル1以下の場合の理論は構築されていた。Florian Ivorra氏と私の共同研究では、これらを一般のレベルへと拡張し「モジュラス付き混合Hodge構造」を導入した。これは自然な双対性を有する。非特異完備多様体と二つの因子の組に対し、その相対コホモロジーにはモジュラス付き混合Hodge構造が入り、ポアンカレ双対性が成り立つ。これにレベル1以下の理論とLaumon1モチーフの関係を組み合わせることで、加藤・Russellによる「モジュラス付きAlbanese多様体」を1モチーフに拡張できた。 モジュラー曲線のヤコビ多様体は数論における重要な対象で、様々な角度から研究されてきた。特に有理点のねじれ部分や最大不分岐アーベル被覆を決定するという問題は重要で、レベルが素数の場合はどちらもMazurにより研究され、後にはより一般の設定で多くの研究者により考察されてきた。同様な問題をカスプをモジュラスとする一般ヤコビ多様体に対して考えることができる。これらについてレベルが平方因子を持たない場合に有理ねじれ部分をFu-Tsun Wei氏との共同研究でほぼ決定した。正標数関数体上でDrinfeldモジュラー曲線に対する類似も得た。また、Yifan Yang氏との共同研究では、レベルが素数の場合にモジュラー曲線の最大アーベル被覆でカスプの外で不分岐なものを決定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モジュラス付きモチーフの理論はまだ発展途上であるが、ホッジ理論におけるよい対応物が構成できた。これは今後のモジュラス付きモチーフの研究を進めるうえで有用な指針を与えてくれることが期待できる。また、意外な応用としてモジュラー曲線の一般ヤコビ多様体の数論的な研究を進めることができた。これらの成果は論文として専門誌にも順次公開されている。 以上の通り、研究は順調におおむね進展している。
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今後の研究の推進方策 |
モジュラス付きモチーフの理論については共同研究者に恵まれており、多くの協力者と多角的に研究を進めている。斎藤秀司氏・Bruno Kahn氏との共同研究が一つの柱であるが、ここには宮崎弘安氏も共同研究にしてもらえた。Florian Ivorra氏と行っているモジュラス付き混合ホッジ構造の研究や、Kay Ruelling氏と行っている相互層のテンソル積に関する研究、Amalendu Krishna氏と行っている加法的高次チャウ群を用いたモチーフ圏の研究も進めたい。次年度はドイツで行われるK-理論の大規模な研究集会に招待されている。上記の研究者の多くはこの研究集会に参加する見込みなので、その機会に集中的に議論を行う予定である。 モジュラー曲線の一般ヤコビ多様体に関する研究は昨年度より一段と活発化した。これまで共同研究を行ってきたYifan Yang氏・Fu-Tsun Wei氏との議論を続ける。また、次年度はこのテーマに関する二つの国際研究集会に招待されているので、その機会に新たな題材を取り込みたい。
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