研究課題/領域番号 |
18K03233
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
竹山 美宏 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60375392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多重ゼータ値 / q類似 |
研究実績の概要 |
今年度は,これまでに研究してきた1のベキ根における有限多重調和q級数の理論と,Rosen によって導入された「代数的数の有限類似」との関係について考察した(Julian Rosen氏,田坂浩二氏との共同研究)。 代数的数の有限類似は,おおまかには以下のように定義される。位数pの有限体の直積と直和を,pを素数全体を動かして取り,直積を直和で割って得られる環を考える。この環の元のうち,有理数係数の斉次線形漸化式を満たす数列の素数番目の項を並べたものとして得られるものを,代数的数の有限類似という。たとえば,素数pに対し,ルジャンドル記号(5/p)の値は,フィボナッチ数列のp番目の項と,pを法をして一致する。よって,(5/p)の値を並べて上記の環の元と見なしたものは,代数的数の有限類似である。 代数的数の有限類似全体は環をなす。我々は,この環における零因子を具体的に無限個構成した。これらは二つの系列からなり,一つは余弦関数の特殊値の最小多項式を特性多項式とする数列から定まる。この数列は,Rogers-Ramanujan 型恒等式に関する先行研究に現れる多項式について,変数qを1に特殊化して得られるものである。もう一つは,Shanks による有理数体の3次の巡回拡大を定める多項式に関係するものである。 前者の結果については,変数qを入れた1パラメータ変形を考えることもできて,各素数pごとに変数qを1のp乗根に特殊化すると,上記と同じ数列が得られる。零因子の構成では,この数列の素数番目の項だけを取り出すことになるが,その残りの項には,特性多項式の根である余弦関数の特殊値も現れる。これはq類似を考えることにより初めて見られる現象で興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスの感染拡大のため,共同研究者との対面による研究打ち合わせなどが行えなくなり,論文の作成に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
1のベキ根における有限多重調和q級数に関するこれまでの研究成果を,今年度の研究で扱った代数的数の有限類似のような多重ゼータ値以外の対象の研究に応用したい。コロナ禍が続いているため,国内外への出張は難しい状況であるが,オンラインによる打ち合わせなどを通じて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大のため国内外への出張が実施できなかったため,次年度使用額が生じた。可能な範囲で出張,もしくは関連分野の研究者を招いて専門的知識の提供を受ける予定であるが,コロナ禍の状況によっては研究資料の購入などで代替する。
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