研究実績の概要 |
数論的誤差項のハイブリッド型平均値が本研究の一つの大きな研究課題である.それによって性格の異なる数論的誤差項の振動具合を測りたいというのが当初の考えであった.前年度には,ディリクレの約数関数 d(n) の総和から得られる数論的誤差項Δ(x)に対して, 1<α≦2のとき, Δ(x)とΔ(x^α)の積の [1,X] における積分が O(X^{5/4+α/8}(log X)^3) であるという結果を得ていた.Δ(x)^2 の積分は主要項 X^{3/2} を持つから,上からの評価としては, Δ(x)^2 とΔ(x)Δ(x^2)の積分は同じ評価を持ち,α=1 で不連続であることがわかる. 令和3年度は, この研究の継続として, 任意の実数α>2 に対して Δ(x)Δ(x^α)の積分が O(X^{1+α/4}(log X)^{5/2}) と評価されることを示した.さらに Δ(x)^2Δ(x^α)についても上からの評価を得た.これらはコーシー-シュワルツの不等式から得られる評価を凌駕しており, 非自明な評価であるということができる. さらに (Δ(x)Δ(x^α))^2 の積分については, 主要項が c(α)X^{3/2+α/2} であるような漸近式を示すことができた.ここで c(α) はαにのみ依存する定数である. これらを示すのに用いた手法は主にヴォロノイ公式である.特にヴォロノイ公式の最初の有限和について, イヴィッチの large value argument を用い, その高次べき平均を詳しく解析した結果を用いた. 以上の結果は現在 "Hybrid mean values of Δ(x) and Δ(x^α) in the Dirichlet divisor problem" として論文にまとめているところである.
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今後の研究の推進方策 |
リーマンゼータ関数ζ(s)に対するハーディ関数 Z(t) の平均値の研究も本研究の一つの大きな柱である.本年度はSL(2,Z)に関する重さ k の保形形式 f(z) に付随する L 関数から得られるハーディー関数 Z_f(t) を考え,Z_f(t) の平均, Z_f(t)とζ(1/2+it)の積の平均,あるいは Z_f(t) と Z(t) の積の平均など, Z_f(t) を含んだハイブリッド型平均値を考えたい.
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