研究課題/領域番号 |
18K03239
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
星 裕一郎 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (50456761)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遠アーベル幾何学 / 多重双曲的曲線 / 狭義単調減少型多重双曲的曲線 / 遠アーベル開基 / 単遠アーベル的復元アルゴリズム / 組み合わせ論的遠アーベル幾何学 / p進Teichmuller理論 / 双曲的通常性 |
研究実績の概要 |
研究計画調書の「研究目的、研究方法など」に記載した「(A-1)特殊な双曲的多重代数曲線に対する遠アーベル予想の解決」の研究として、正規代数多様体から代数曲線への射に対するホモトピー系列の完全性の研究を行い、その応用として、2次元多重双曲的曲線に対する遠アーベル予想に関する応用を得ることができた(論文投稿中)。また、再び「(A-1)特殊な双曲的多重代数曲線に対する遠アーベル予想の解決」の研究として、狭義単調減少型多重双曲的曲線と呼ばれる特殊な多重双曲的曲線に対する遠アーベル予想を解決した。その上、この成果の応用として、任意の非特異代数多様体が遠アーベル多様体による開基を持つか、という遠アーベル幾何学における古典的な問題を、非常に広いクラスの基礎体において、肯定的に解決することに成功した(論文投稿中)。 研究計画調書の「研究目的、研究方法など」に記載した「(A-3)単遠アーベル的復元アルゴリズムによる双曲的代数曲線の幾何学の模倣・模擬の実行」に関連する研究として、PIPSC型副有限群という組み合わせ論的遠アーベル幾何学の対象の研究を行った。特に、PIPSC型副有限群から出発して、それに関わるある副有限グラフを復元する単遠アーベル的復元アルゴリズムを確立した。その上、このアルゴリズムを用いて、PIPSC組という対象に対するある単遠アーベル幾何学的輸送を実現した(論文掲載確定)。 研究計画調書の「研究目的、研究方法など」に記載した「(B-2)双曲的通常曲線の数論幾何学的性質の研究」に関連する研究として、標数3の場合の超楕円曲線の双曲的通常性の研究を行った。その結果、標数3では種数5以下の任意の射影的超楕円曲線が双曲的通常であるということを証明した(論文掲載確定)。これは、任意の双曲的曲線は双曲的通常であろう、というp進Teichmuller理論における基本問題に対する肯定的成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
狭義単調減少型多重双曲的曲線に対する遠アーベル予想の解決は、「特殊な双曲的多重代数曲線に対する遠アーベル予想の解決」に関連する研究が、計画のとおりに進展しているということの証左の一つである。また、この成果の応用として得られた、非特異代数多様体の遠アーベル開基の存在という遠アーベル幾何学における古典的な問題の解決は、上記「特殊な双曲的多重代数曲線に対する遠アーベル予想の解決」という研究の方向性が、一定の意味において適切であることを示唆していると考えられる。また、標数3での超楕円曲線の双曲的通常の研究の進展は、「双曲的通常曲線の数論幾何学的性質の研究」に関連する研究が順調に遂行されていることを意味していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の研究実施計画のとおりの研究を行っていこうと考えている。特に、数論的・組み合わせ論的な設定における遠アーベル幾何学の更なる発展、そして、p進Teichmuller理論に登場する対象の更なる明示的理解が研究の中心となる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究遂行のために必要であると計画されていた物品費が、当初計画よりも大幅に小さくなってしまったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度使用額は、外国人研究者の招聘のための費用や、あるいは、研究発表のための旅費に充当される予定である。
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