研究実績の概要 |
交付申請書に書かれた研究目的の (A), すなわち全射非同型な自己正則写像をもつ正規射影的代数曲面について過去の研究で得られた結果をまとめ論文にする, ということを行なってきた. そのうち特に特異点に関するものは, 正規複素解析的曲面の有限自己正則写像の研究にも有効なので, その部分を先に一つの論文としてまとめることにし, 現在その作業を行なっている. 一方, 過去の研究で大域的な構造に関する部分については, 特性完全不変因子など独自の概念を導入していくつかの結果が得られているわけだが, これらに関して論文をまとめる作業はほとんど行えなかった. 特異点に関する部分は新展開があったので, これについて説明する. 過去の研究では, ある被約因子を保存する自己正則写像について, 正規曲面とその因子のなす対は高々対数的標準特異点しかもたない, というのが主な結果であった. 今回は正規曲面と被約因子の対で, 高々対数的標準特異点しか持たないものついて, 本質的ブローアップという概念を導入し, 上記の自己正則写像は, 一部の例外を除き, 本質的ブローアップによって高々商特異点のみを許す曲面に延長されることを示した. 類似の結果は10年ほど前に Favre 氏により付置空間の理論の応用して得られている. しかし今回は付置空間は使わず, 通常の代数幾何的な枠組みの議論で, Favre 氏の結果を少し拡張する結果を得ることができた. この部分を過去の特異点に関する研究に加えて, 論文をまとめている最中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
パソコン購入費が思っていたより高くなり, 残金が少額となったため, さらなる旅費に使うことを断念し, 代わりにいくつかのパソコン関連用品を購入した. しかしその際も, 金額の問題で購入を諦めた商品があり, その結果, 残金が少々余ってしまった. 次年度はノートパソコンなどを購入する予定だが, 金額を精査し, 旅費としてもっと使えるようにするつもりである.
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