本年度も昨年度に引き続き、Lubotzky-Phillips-Sarnak によって構成されたグラフの一般化について研究を行った。このグラフは有理数体上の定符号四元数環とその整環を用いて構成されるグラフである。先行研究である Lubotzky-Phillips-Sarnak および Chiu は整環として特定の極大整環を用い、当該グラフが Ramanujan グラフであることを示している。そこで整環をもっと一般にした場合でも当該グラフが Ramanujan グラフであるかを判定することが本研究の最終目標である。本年度も昨年度に引き続き、整環が Hashimoto によって構成されたパラメータ付き Eichler 整環である場合を主に研究した。この整環は、Ibukiyama によって構成されたパラメータ付き極大整環を本質的に含むものである。Ibukiyama の極大整環の場合には、特別な場合 (単数群の構造が非常に易しい場合) にグラフが実際に Ramanujan グラフになることを過去に証明しているので、本年度はそれと同じ場合について、証明がどこまで同様にできるか、あるいはできない部分があるのか状況を整理しながら考察を進めたが、最終的な証明には至らなかった。また、Eichler 整環を採用した場合の問題点 (特定のノルムを持つ元に対しては素因数分解の一意性が成り立たない場合があること) についても考察を進めることができた。今後はそれを踏まえて証明を完成させたい。以上は横浜国立大学の Hyungrok Jo 氏と日本大学の杉山真吾氏との共同研究である。
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