研究実績の概要 |
代数曲面の自己同値群の生成元は (1)標準束がねじれ元の場合、(2)極小楕円曲面であって、標準束がねじれ元でない場合、(3)上記の(1),(2)以外の場合 に よって、それぞれ様子が大きく異なることが知られている。(2)と(3)の場合は私の結果により、ある種の場合は生成元が決定され、他の場合も同様であろうと予想される。(1)の場合のうち、アーベル曲面の場合はOrlovにより自己同値群の生成元はわかっており、K3曲面の場合もBridgelandによる自己同値群の様子に関して予想があり、ピカール数が1の場合はこの予想が正しいことが知られている。また、超楕円曲面の場合もPotterにより自己同値群の生成元が調べられている。 そこで私は残っているEnriques曲面の場合を調べている。Enriques曲面の場合は、しばしば球面対象と呼ばれる対象が存在し、それに付随し捻じれ関手という非自明な自己同値が存在する。一方、Enriques曲面には例外対象と呼ばれる対象が常に存在し、それにも付随して捻じれ関手が構成できる。これらの捻じれ関手はEnriques曲面の自己同値群の記述を難しくしている。 私はEnriques曲面上に球面対象が存在する必要十分条件として、Enriques曲面が滑らかな射影曲線を含むことが同値であることを証明した。Macri--Mehrota--StellariはEnriques曲面のK3被覆のピカール数が10のとき、球面対象を持たないことを示したが、一方、もしEnriques曲面が滑らかな射影曲面を持たないならこの条件を満たすことがわかり、私の結果はMacri--Mehrota--Stellariの結果の一般化になっている。
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