研究課題/領域番号 |
18K03257
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
下元 数馬 日本大学, 文理学部, 准教授 (70588780)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Tate環 / 概純性定理 / エタール射 / パーフェクトイド代数 |
研究実績の概要 |
Y. Andre氏により直和因子予想が解決されてから、パーフェクトイド空間の理論を用いた可換環論への応用が活発化している。特にMa-Schwedeによる、混合標数を持つ正則環のイデアルの通常冪と記号冪との比較定理が示されてから、特異点論への応用が試みられている。本研究において、Tate環の完備化による位相構造の振る舞いや、完備化を仮定しない形での概純性定理(Almost purity theorem)に別証明を与え、理想的な形で研究を進めることができた。これらの研究に関しては、Davis-Kedlaya、Gabber-Rameroによる先行結果があるが、本研究では彼らの証明を簡略化した形で整理しつつ、Tate環上のエタール拡大を純代数的に扱うことに比重を置くことを目指している。その結果、非専門家にとってもTate代数やパーフェクトイド空間論が理解しやすいものになりつつある。本研究と関連して、Andreによるパーフェクトイド版Abhyankarの補題から完備性という条件を外すために必要な議論を行なっている。これらの研究より派生した問題として、可換環のRiemann拡張問題やガロア拡大理論、パーフェクトイド代数とその傾斜化(tilting)上のベクトル束やピカール群の構造を調べている。扱う環が体を含まない上に非常に巨大であるため、細心の注意が求められる。 上記以外の研究テーマとして、混合標数を持つ正規スキームのBertini型定理を堀内淳氏(日本工業大学)と得た。またパーフェクトイド代数の構造を持つBig Cohen-Macaulay代数の存在定理をAndreの結果を用いて示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
扱う代数的対象が体を含まない非ネーター環で位相構造を持つ場合が殆どであり、既存の標準的な理論だけでは不十分という理由により、議論の詳細を慎重に詰めている。本研究課題から派生した問題を検討したり、既存の文献を読み込みながら新しい技術を勉強することに時間を費やしたために論文作成は若干遅れているが、得られた結果についてはほぼ満足のいくものである。またある種の可換環に現れる特異点の変形問題について議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究を土台として、Andreによるパーフェクトイド代数の研究を完備性を仮定しない形で拡張を試みる。また可換環論への応用として概Cohen-Macaulay代数の具体的な構成を目指しつつ、特異点論に応用することも視野に入れて研究を推進する。可換環と数論幾何の研究者と意見交換するためにセミナーや研究集会で発表をする予定である。上記以外のテーマとして組み合わせ論的可換環に関する問題についても取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内外の仕事などで、出張や研究時間の確保が難しかったことが原因である。また研究論文の作成にも細心の注意を払ったことも理由の一つである。次年度は、アメリカの各大学への計画的な出張を念頭に置いて研究を進めていきたい。
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