研究課題/領域番号 |
18K03257
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
下元 数馬 日本大学, 文理学部, 教授 (70588780)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | パーフェクトイド環 / パーフェクトイド・タワー / 対数的正則特異点 / エタールコホモロジー |
研究実績の概要 |
パーフェクトイド空間において克服すべき問題として、ネーター環の構造解析に直接結び付けることが依然として難しい点が挙げられる。これまでの研究の特徴として、ネーター正則環に限られた範囲で大きな成果を見られた一方で、非正則な状況ではほとんど見るべきものが無かった。そこで一般の可換環に対して、パーフェクトイド・タワーなる概念を定式化し、そこから導かれる基本的な性質について多くの興味深い定理を得ることに成功した。その結果、対数的代数幾何学で扱われる対数的正則環との相性が非常に良いことが見出された。またエタールコホモロジーや因子類群に関する重要な定理を証明することにも成功した。当該研究は仲里渓氏(名古屋大学)と伊城慎之介氏(日本大学)との共同研究として進行中であるが、今後の目標としてパーフェクトイド・タワーの公理を満たす対数的正則環以外のネーター環を探すことである。またホモロジカル予想の別証明の可能性についても議論を行った。上記以外の研究課題として、代数幾何学におけるGrothendieckの変形理論を使って正標数のネーター可換環のp-進変形について非自明な例を構成した。またFrobenius写像を用いた正標数の特異点解析を行い、スモールCM予想に対して若干の貢献を与えた。スモールCM予想はパーフェクトイド空間の手法が使いづらい状況にあるが、Frobenius写像が非常に役立った。これらはE.Tavanfar氏(IPM)との共同研究であり、いずれも継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究として完成した論文は77ページという長大なものであるにも関わらず、Zoom等を使用して比較的短期間で完成させることが出来た。本研究の後続である応用についても議論を行っており、比較的順調に進んでいると言える。完成した論文は現段階でアーカイブにアップし、適切な専門雑誌に投稿予定である。また既存の可換環論の問題にも応用すベく、勉強とセミナーを行っているが、こちらは遅々としてまだ大きな進展が見られない。今後の課題であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、進めている研究には大きく分けて二つの方向性があると考えている。一つ目は可換環論そのものの研究である。例えばSerreの重複度予想は依然として未解決である。またこの方向に関わる未解決問題としてスモールCM予想があるが、正標数の場合を重点的に調べる計画を立てている。具体的には3次元の場合について肯定的な結果が得られることが望ましい。二つ目は整数論的な可換環論の研究である。パーフェクトイド・タワーの研究において、混合標数を持つネーター環の問題を正標数に帰着させる方法を編み出した。混合標数の可換環論はこれまで組織的な研究内容が殆ど無かったせいもあり、今後はGalois表現で扱われる変形環やHecke環など、具体例を含めてより汎用性のある理論を構築すること目指す。またパーフェクトイド・アビヤンカーの補題の改良に関する研究を完成させる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
対面形式で開催される予定であった各種の研究集会やシンポジウムがオンラインによる開催になったため、予算の計画の変更が生じたためである。また海外の研究者との直接対面による共同研究が困難になったため、国内の研究者と頻繁にやり取りを行った。その結果、比較的短期間で研究論文を完成させることが出来た。今後は国内と海外との両方でバランスを調整しながら共同研究を行う計画である。また研究に必要な専門書の出版が遅れたものがあり、当該年度に購入する予定である。
|