研究実績の概要 |
2018年度は次の論文2本を出版した. [1] "Rational points of elliptic surfaces and the topology of cubic-line, cubic-conic-line arrengements", accepted to Hokkaido Math.J. (徳永浩雄氏, 山本桃果氏と共著), [2] "A note on the topology of arrangements for a smooth plane quartic and bitangent lines", accepted to Hiroshima Math. J. (徳永浩雄氏, 山本桃果氏と共著). いずれも楕円曲面の有理点を平面曲線の埋め込み位相の研究に応用したものである. また, プレプリントを4本, [3] "On the Abel-Jacobi map of an elliptic surface and the topology of cubic-line arrangements", arXiv1802.06661 (徳永浩雄氏と共著), [4] " The matroid structure of vectors of the Mordell-Weil lattice and the topology of plane quartics and bitangent lines", arXiv:1902.04723 (佐藤隆太郎氏と共著), [5] "Two-graphs and the embedded topology of smooth quartics and its bitangent lines" , arXiv:1903.07316 (山本桃果氏と共著), [6] " Zariski N-ples for a smooth cubic and its tangent lines", arXiv:1903.04098 (徳永浩雄氏と共著)執筆した. [4],[5]はmatroid, two-graphといった組合せ論の概念を新たにZariski-pairの研究に導入した論文である. [6]は楕円曲線の捻れ点に注目しZariski-pairを研究する手法を用いている. さらに, 現在[6]で得られた着想を発展させた論文をE. Artal氏, 徳永浩雄氏, 白根竹人氏と共に執筆中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の研究はおおむね順調に進展していると以下の理由で判断した. 研究実績の概要で述べたように, 論文2本を出版, プレプリントを4本執筆・投稿し, さらに1本の論文を執筆中である. また, 国際研究集会での講演1件, Universidad Compultense Madridでのセミナー講演を1件行っており, 業績は順調に伸びていると言える. また, 研究内容については, 本研究の短期的目標の一つであった平面4次曲線とその2重接線からなる配置の埋め込み位相の分類は研究概要[2], [4], [5]の論文により完全にではないが, 詳細な状況がわかってきた. これらの結果は, Mordell-Weil格子の最短ベクトルの集合に付随するmatroid構造やtwo-graphの構造を調べる事により得られているが, これはまたZariski-pairの研究におけるmatroidやtwo-graphの有用性を示していてる. この意味で, 他分野からの手法を導入するという目標についても概ね順調に進んでいると言える. 研究環境についても, 2018年9月にスペインZaragoza大学のE. Artal-Bartolo氏, J.I. Cogolludo氏を訪問をするなどして, 国内外の数学者との直接的な交流が広がりつつあり, 順調に進展している. これは本研究費がなければできなかったことである. 特に, E. Artal-Bartolo氏が2019年3月に来日した際に行った研究打ち合わせが切っ掛けとなり, 研究概要[6]の着想を楕円曲面だけでなく他の曲線にも一般化する方向性が見出され, 交流の広がりを研究の進展に結びつけることができたと言う意味でも順調である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では, まず執筆中である論文を書き上げることを第一の短期的な目標とする. この論文で示された方向性により, 今までの研究の中でMordell-Weil格子が果たしていた役割を, 曲線の0次ピカール群で置き換えることができることが示唆されているが, これが正しいかを調べる. Mordell-Weil格子は2次被覆に付随してしか扱えなかったが, 0次ピカール群自体は被覆を与える必要がないので, 本研究の長期目標の一つである分岐被覆にとらわれない設定での研究に向けての一歩が踏み出せる予定である. また, 研究環境として, 本年度はフランスのPau大学のV. Florensのもとを訪れる予定であり, あらに交流の幅を広げていく予定である.
|