研究実績の概要 |
2020年度は次の論文2本が専門論文誌に受理され, 出版されたまたは出版される予定である [1] "Elliptic surfaces of rank one and the topology or cubic-line arrangements", J. Number Theory, 221 (2021), 174-189 (徳永浩雄氏との共著). [2] "Torsion divisors of plane curves with maximal flexes and Zariski pairs", accepted to Math. Nachr. (E. Artal Bartolo氏, 徳永浩雄氏, 白根竹人氏との共著), (arXiv:2005.12673). また, 次のプレプリントを執筆し, 論文誌に投稿中である. [3] "Trisections on certain rational elliptic surfaces and families of Zariski pairs degenerating to the same conic-line arrangement" (arXiv:2103.07639, 徳永浩雄氏, 舛谷亮介氏, 川名のん氏との共著) . さらに, 2020年12月に徳島大学数学談話会(Zoom開催)において「射影平面曲線の埋め込み位相の分類問題とその展開」と題して講演を行い, 2021年2月に岡山理科大学の半田山・幾何・代数セミナーにおいて「射影平面曲線の分類問題」と題して講演を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究は概ね順調に進展していると以下の理由から判断した. まず, 研究実績でも述べた通りに, 論文2本が受理され, さらに1本のプレプリントを執筆した. また, 徳島大学と岡山理科大学での講演の機会も得られたことから, 研究実績としては十分の成果が得られていると判断した. 上記の研究成果の論文のうち, E. Artal Bartolo氏, 徳永浩雄氏, 白根竹人氏と共に出版した論文[1]は, 当初の目標の一つであった, Mordell-Weil格子に代わる, 4次曲線に限らないより幅広い範囲の曲線に適用できる枠組みを, 代数曲線のPicard群を使うことで一つの形で実現する論文であり, 中期的な目標の一つは達成できたと言える. また, 徳永氏との論文[2], 徳永氏, 舛谷氏, 川名氏とのプレプリント[3]では, 具体例の構成などをこれまでの手法に比べてより簡便に計算をすることを可能にする手法を見出した. これらのことにより, 新しい枠組みの中で, 新たな具体例を見出す目処が立ったことから, 研究をさらに展開させていく手がかりが得られたと思われる. 唯一の懸念事項はコロナウィルスの影響である. Zoomを利用する事で, 遠隔での研究打ち合わせの開催や研究集会への出席する体制を整えることはできたが, やはり対面での実施に比べると情報収集やニュアンスの伝達や創造活動において劣る面がある. 2020年度はこれまでの蓄積でなんとか成果を上げることができたので「概ね順調」としたが, 来年度以降への影響が生じる可能性はある.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである. まずは投稿中の徳永氏, 舛谷氏, 川名氏と共著のプレプリント[3]を出版までにこぎつけるのが第一の目標である. その後, 次の事柄に取り組む予定である. (1) 徳永氏との論文[2], 上記プレプリント[3]の手法を用いて, より高い次数の曲線における新たなZariski tupleの具体例を構築し, それを元に新たな現象・研究の方向性を見出す. (2) E. Artal Bartolo氏, 徳永氏, 白根氏との論文[1] で用いたPicard群を用いたZariski tupleの判別法を若干修正することで, 2019年度に得られた大野氏との結果を改良することが見込まれる. このことの細部を確認し, 昨年度からの課題であった, 4次曲線とその2重接線からなるZariski tupleの個数を決定することを目指す. (3) 曲線のPicard群の元と, 曲線の被覆の間の関係をより詳細に調べ, 論文[1]の手法をさらに発展できないかを検討する. また, 昨年度はZoomなどを用いた遠隔での非対面の研究活動が主になっていたが, 不十分な面も見られたので, 感染対策をしっかりしながら対面での活動を再開できる方法を模索する. また, 所属が茨城高専から岡山理科大学に変わったことから, 新たな研究ネットワークの形成も模索する.
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