研究実績の概要 |
2022年度の研究実績は以下のとおりである. 研究論文については, 論文 [1] "Torsion divisors of plane curves and Zariski pairs", Algebra i Analiz, 2022, 34:5, pp.1-22 (E. Artal-Bartolo, T. Shirane, H. Tokunaga氏との共著論文)が専門論文誌に受理され, 出版された. また, プレプリント[2] "Ramified and Split models of elliptic surfaces and bitangent lines of quartic curves", arXiv:2304.07717, (H. Tokunaga, E. Yorisaki氏との共著論文)を執筆した. また, 研究集会での講演については, 研究集会「城崎代数幾何学シンポジウム」にて, "Splitting invariants and a π_1-invariant Zariski-pair of conic-line arrangements"の題目で口頭発表を行い, さらに徳島大学, 高知大学にて開催された研究集会でそれぞれ口頭発表を行った. そして, 登壇者ではないものの, 共同で日本数学会の2023年度年会にて一般講演での発表を2件行なった. 研究交流の面においては,今年度より 研究集会「代数曲面論ワークショップ」の世話人を引き継ぎ, 岡山理科大学, 東京都立大学, 徳島大学, 高知大学それぞれにて計4回のワークショップを開催し, その運営に関わった. 2021年度より継続して行なっているイスラエルのM. Amram, U. Sinichkin氏とのconic-line arrangementについての共同研究も継続しており, 論文の執筆も開始することができた. 次年度にはプレプリントとして出版をすることができる見通しである. また, B. Gueville-Balle氏との研究交流も継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究は概ね順調に進展していると以下の理由から判断した: 研究実績で挙げられている通り, 論文1本が受理され, プレプリント1本もarxivにアップロードすることができた. また, 研究集会での口頭発表も5件行い, 4件のワークショップの運営に関わることもできた. 研究活動が活発化してきているのはコロナによる研究集会の開催への影響がだいぶ小さくなってきていることが一因であると思われる. 昨年度の研究推進方策に挙げた目標として, (1) 徳永氏・白根氏との共著論文を完成させ, プレプリントにすることは叶わなかったが, これは(2) イスラエルのM. Amram, U. Sinichkin氏との共同研究の発展が十分に進み, そちらを優先させたことによる. また, (3) 岡山理科大学での小規模の研究集会の開催はすでに述べたように実現をすることができた. 研究内容については, これまでの手法ではZariski対になっているかの区別のできない例がさらに発見されたので考察を行う材料が増えたという意味では順調であるが, 新たな手法の開発についてはまだまだ模索をする段階ではある. 一方で, 次数の低いconic-line arrangementについては, これまでは散発的な具体例を中心に扱っていきていた状況から, ある特定の固定された組み合わせ型を持つものについては, そのようなconic-line arrangement全体を考察するための手法が得られつつあり, 個々の曲線だけでなく, 曲線の族を一括して扱う見通しが立ちつつある. これらのことから, 総合的に見て研究は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究においては, まずはイスラエルのM. Amram, U. Sinichkin氏との共同研究に関する論文を完成させ, 査読付き論文誌に投稿することを目指す. その後, 一旦棚上げにしていた徳永浩雄氏, 白根竹人氏との共同研究の論文を仕上げることも目指す. さらに, 昨年度までの研究で, ある特別な場合において指定された組合せ型を持つ射影平面曲線を各個的に扱うのではなく, 変形族として包括的に扱う手法を得たので, これを他の組合せ型に対しても適用し, 変形族の様子を調べる. このことにより, より包括的な形で埋め込み位相の研究を進めることができると思われる. また, B. Guerville-Balle氏との研究交流で見出されたこれまでの手法では埋め込み位相の区別ができないような曲線についての考察も継続して続ける. コロナの影響が小さくなっていることから, 国際研究集会を含む研究集会に積極的に出席し, 意見交換・情報収集を行うとともに, 研究ネットワークの拡大を図ることで, 解決につながる糸口を探す. その皮切りとして6月にスペイン, Jaca市にて開催される国際研究集会「Algebraic and topological interplay of algebraic varieties」に出席する. この他, 可能であればモンゴル, ベトナムそれぞれにて開催される国際研究集会に出席をする. 昨年度に引き続き, 代数曲面ワークショップを開催し, 講演者の選定に関わることで, より効率的に自分の研究と関連がある研究の情報収集や研究交流を行うことを図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響は小さくなってきているものの, ここ数年の対面での研究交流の停滞の皺寄せを単年度では解消をすることができなかった. 次年度は新型コロナウィルスが5類に分類され, WHOの緊急事態宣言も解除されたことから, 研究活動がコロナ以前の水準行うことができることが見込まれ, 皺寄せが解消できる予定である.
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