最終年度は,投稿した論文の改訂に十分に時間をかけて,ハイゼンベルグ群内の(時間的)極小曲面,離散平均曲率一定曲面,定曲率統計多様体に関する4本の論文を最終的に出版することができた.これにより,研究期間全体を通じて,計11本の査読論文を国際誌に出版することができた. 内容は多岐にわたり,離散微分幾何に関して2本,ガウス写像に関して2本,統計多様体に関して2本,ハイゼンベルグ群内の曲面に関して2本,時間的極小ラグランジアン曲面に関して1本,アフィン平面曲線に関して1本,リー環の実形と曲面の関係に関して1本となっている. この中で,研究課題の中心テーマである離散微分幾何に関しては,離散平均曲率一定曲面のこれまでの定義を自然に一般化した事が重要な成果である(Discrete constant mean curvature surfaces on general graphs, Tim HoffmannとZi Yeとの共著,2022年 Geometriae Dedicataに出版). 新しい定義は,今後さまざまなところで使われる普遍的な定義になると期待できる. 一方,離散と連続の可積分幾何の融合では,連続の可積分曲面に関してさまざまな成果を得る事ができた.特に2次元複素射影空間内の極小曲面のガウス写像の特徴づけについては,非常に一般的で有効な特徴づけをすることができた(Ruh-Vilms theorems for minimal surfaces without complex points and minimal Lagrangian surfaces in CP^2 ,J. F. DorfmeisterとH. Maとの共著,2020年にMathematische Zeitschriftに出版).別の実形を用いれば,別のクラスの極小曲面に対しても,同様の特徴をすることができると期待できる.これら連続の可積分幾何と離散可積分幾何の関係を調べることはさらに重要な研究課題になる.
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