研究実績の概要 |
本研究は2次元の曲面や3次元多様体の幾何構造の研究である。幾何構造はこれらの多様体の基本群の線型表現と密接に関連する。従来は2次元表現であるSL(2,R) と SL(2,C) への表現がよく調べられていて今でも重要な研究対象であるが,一方で高次の表現の研究が活発に行われるようになっている。1点穴あきトーラスと開区間との直積でできる3次元多様体を8面体に分割することで,基本群のSL(2,C)表現の変形空間を理想双曲8面体の変形空間と関連づけられる。この8面体分割から自然に構成される1点穴あきトーラス上の複素射影構造を見ることで,展開写像が単射でない擬フックス群をホロノミーにもつ複素射影構造がどのように得られるか,特にそれが一度離散表現を離れて再び離散表現に至る過程が可視化できる。さらにこの手法は Garoufalidis-Thurston-Zickert の理論を用いることで高次元表現の記述にも用いることができる。オンライン授業への対応など研究以外の仕事が忙しく研究成果,進捗については恥ずかしい限りであった。2020年度は出張できない状況であったが,オンラインセミナーには多数参加することができた。研究費はオンライン会議に参加するための環境整備と図書の購入に用いた。曲面のSL(2,C)表現に関して,AdS 幾何からの研究があるが,そこで必要なローレンツ幾何に関して多くを学ぶ機会があった。その他,幾何群論に関わる計算機実験を実施した。
|