研究課題/領域番号 |
18K03268
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田崎 博之 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30179684)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 対称空間 / 対蹠集合 / 実形の交叉 / 複素旗多様体 / 有向実Grassmann多様体 |
研究実績の概要 |
コンパクト対称空間内の対蹠集合の解明に関する研究目的Iについては、古典型コンパクト対称空間およびその商空間の極大対蹠集合の分類を行列を使って具体的に記述した成果をまとめた田中真紀子氏との共著論文の原稿を昨年度から執筆していたが、今年度この論文原稿を完成させ学術雑誌に投稿した。この成果は古典型コンパクトLie群およびその商群の極大対蹠部分群の分類に基づいている。今までは主に連結なコンパクトLie群を扱っていたが、非連結コンパクトLie群の極大対蹠部分群の分類が重要になる場合もあり、これらの分類を進めるために非連結コンパクトLie群の極地の研究を始めた。現時点ではこの研究はまだ完成していない。2020年度にも引き続きこの研究を進める予定である。G型コンパクト対称空間の具体的実現を利用したその極大対蹠集合の分類をまとめた田中真紀子氏、保倉理美氏との共著論文の原稿を昨年度から執筆していたが、今年度この論文原稿を完成させ学術雑誌に投稿した。この研究の続きとしてF型コンパクト対称空間の具体的実現を利用したその極大対蹠集合の分類について現在検討中である。 複素旗多様体に拡張された対蹠集合の概念をより普遍的な形で再定式化し、複素旗多様体内の二つの実形の交叉の対蹠性を解明するという研究目的IIについては、研究成果をおおむね井川治氏、入江博氏、奥田隆幸氏、酒井高司氏との共著論文にまとめたが、まだ若干の問題が残っておりそれらを含めて論文の原稿を執筆中である。 有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合を解明するという研究目的IIIについては、昨年度検討を始めた極大対蹠集合と全測地的部分多様体の関連性について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的Iについては、成果を二編の論文にまとめ学術雑誌に投稿中である。目的にしていた事項が部分的には得られ、それに続く研究を現在進めている。 研究目的IIについても、成果を論文にまとめているところであり、目的にしていた成果がおおむね得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的Iに関しては、連結コンパクトLie群には極地として埋め込めないコンパクト対称空間を対合による半直積として記述できる非連結コンパクトLie群に極地として埋め込む方法を利用する。そのためには、連結コンパクトLie群の対合による半直積の極地の構造を調べることが重要になる。連結コンパクトLie群の極地については、極地の概念を定義したChen-長野により詳しく調べられているが、非連結コンパクトLie群の極地についてはほとんど研究成果がない。非連結コンパクトLie群の極大トーラスにあたるもの、およびその共役性についてはHermann作用を利用して示すことができる。これにより、非連結コンパクトLie群の極地、極地として埋め込まれたコンパクト対称空間の極大対蹠集合を調べることができる。 研究目的IIに関しては、複素旗多様体内の二つの実形を定める対合が可換な場合にはおおむね研究は完了している。この二つの対合が可換でない場合には、大野晋司氏の関連した研究成果を利用して可換ではない二つの対合が定める実形の交叉の研究を進める。 研究目的IIIに関しては、有向実Grassmann多様体内の複素Grassmann多様体に起因する横糸、特殊Lagrange-Grassmann多様体に起因する縦糸が佐々木優氏の研究している対蹠集合の連結性と等質性と深く関係していると思われる。そこで、これら横糸と縦糸を連結性と等質性の観点から研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2月3月に予定していた研究集会出席や研究打合せのための出張をほぼすべて取り消したため。 次年度に新型コロナウイルス感染症が終息すれば、研究集会を開催して研究情報の交換を行いたい。終息しない場合は、ネットワークを利用した研究情報の交換を行うための仕組みを構築したい。
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