コンパクト対称空間内の対蹠集合の解明に関する研究目的Iについては、昨年度から始めた非連結コンパクトLie群の極大対蹠部分群の分類および非連結コンパクトLie群の極地の研究を進めた。コンパクト対称空間を連結コンパクトLie群に極地として埋め込めない場合でも、対称空間を定める対合による半直積を利用して非連結コンパクトLie群に極地として埋め込める。非連結コンパクトLie群への極地としての埋め込みはコンパクト対称空間の極大対蹠集合の性質を調べるために有効であることを明らかにした。さらに、非連結コンパクトLie群の極地を具体的に記述し、その分類をおおむね完成させた。今後は対称空間を定める対合による半直積の極地の具体的記述を利用して、コンパクト対称空間の極大対蹠集合の研究を進めていきたい。 複素旗多様体に拡張された対蹠集合の概念に基づいて、複素旗多様体内の二つの実形の交叉の対蹠性を解明するという研究目的IIについては、研究成果をまとめるために必要な問題が残っていて、それを解明し論文として発表するための準備を進めている。 有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合を解明するという研究目的IIIについては、階数3の有向実Grassmann多様体に極大対蹠集合として現れるFano平面の直線全体の集合をいくつかの観点から拡張できることを明らかにした。これによって、階数5以上の有向実Grassmann多様体の新たな極大対蹠集合の系列を構成できた。さらに、Fano平面は二元体上の射影平面であることに注目して、有限幾何学の対象から有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合を構成できた。これまでに得られた極大対蹠集合で階数5の有向実Grassmann多様体の極大対蹠集合は尽くされているかどうかについて検討している。
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