研究課題
令和5年度は同変ホモロジー的ミラー対称性の論文(三田史彦氏との共著)およびモースホモトピーを用いてトーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性を論じた論文の2本目(ヒルツェブルフ曲面F1の場合、梶浦宏成氏との共著)が出版に至り、国際研究集会で講演・議論するなど成果の周知に努めた。後者の研究は梶浦氏の指導学生により一般化され、一段落した感がある。一方で前者については、指導学生(博士前期課程)の岩畑竜玄氏とともにトーリック退化をもつ多様体、具体的には旗多様体や複素グラスマン多様体の場合に、同変ポテンシャル関数の研究として発展させた。後者について簡単に説明する。三田氏との共同研究ではトーリック多様体の場合に、カルタン模型による同変フレアーA無限大代数および同変深谷圏を提案し、1次元の場合に実際に構成して同変ホモロジー的ミラー対称性を示した。一方で研究対象をトーリック多様体から拡げる事も重要である。グラスマン多様体やより一般に旗多様体はゲルファント・ツェトリン系と呼ばれるよい可積分系を持ち、これがトーリック多様体への退化族(トーリック退化)を定める。これを用いて旗多様体のポテンシャル関数を計算したのが西納・野原・植田である。彼らの計算の中身を見ると、旗多様体の同変ポテンシャル関数はポテンシャル関数に対数項を加えたものになる事が予想できる。そこでこの方向で、同変ポテンシャル関数を構成し以上の予想通りになる事を計算したのが岩畑氏の修士論文である。なお修士論文では記述を簡単にするため完全旗多様体の場合のみ記述しているが、一般の旗多様体の場合にも同じ主張が成り立つ。同変ポテンシャル関数を曲率項として含む同変A無限大代数や同変深谷圏の定義・計算は今後の課題である。考察できる例が格段に増え、研究の今後の展開へ向けよい選択だったと思う。研究交流面では、研究集会やセミナーの開催を引き続き行った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Advances in Theoretical and Mathematical Physics
巻: 26 ページ: 2611~2637
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Journal of Geometry and Physics
巻: 192 ページ: 104929~104929
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