研究課題/領域番号 |
18K03270
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
二木 昭人 東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (90143247)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 体積最小原理 / ケーラー・リッチソリトン / 佐々木・アインシュタイン計量 / アインシュタイン・マックスウェル方程式 / K安定性 / スカラー曲率一定ケーラー計量 / ヤウ・ティアン・ドナルドソン予想 |
研究実績の概要 |
アインシュタイン・マックスウェル方程式は4次元一般相対性理論において研究されていたが,コンパクトケーラー曲面 (M,g) において,正値の滑らかな関数 f が J grad f は正則キリングベクトル場であり, h = f^{-2}g はスカラー曲率一定計量であるなら, h はアインシタイン・マクウスウェル方程式の解に対応することが示される.このような解 h を共形的ケーラー,アインシュタイン・マックスウェル計量という.コンパクトリー群 G のリー環の元 K と G-不変なケーラー類 Ω を固定し,g のケーラー形式 が Ω に属し,f^{-2}g がスカラー曲率一定計量となるような ケーラー形式を求める,という形で問題設定をするとこれはケーラー幾何の問題となる.このような g はアインシュタイン・マックスウェル・ケーラー計量と呼ばれるべきものである.実際,K = 0 とおくと,f = 1 として良いので,これは未解決のヤウ・ティアン・ドナルドソン予想に帰着される.従って,アインシュタイン・マックスウェル・ケーラー計量を求める問題は,難問とされる問題の拡張であるから,さらに難問であることになる.ただ,K の自由度の分だけ,例が豊富に構成しうるという利点がある.このケーラー幾何の観点から,K が与えられたとき,障害 Fut_K が定義され,アインシュタイン・マックスウェル・ケーラー計量が存在するための障害となる.申請者と小野肇は G のリー環をパラメータ空間とする体積汎関数 Vol を定義し,d Vol_K = Fut_K が成立することを示した.しかしながら,Vol は凸性も固有性ももたないことがわかる.従って,複数個の解を持ちうる.さらに正則自己群の簡約可能性定理が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共形アインシュタイン・マックスウェル・ケーラー計量の存在に対する障害の体積最小性原理を用いた理解が得られた.それについての論文が Journal of the Mathematical Society of Japan から出版された.この応用の他,正則自己同型群の簡約可能性の証明などの進展があった.
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今後の研究の推進方策 |
体積最小性原理の応用として,ヒルツェブルフ曲面における新しい解の存在を示したい.正則自己同型群の簡約可能性の証明をより一般の状況設定で証明したい.Cahen-Gutt モーメント写像と変形量子化をケーラー幾何の観点から研究し,K安定性と類似のアプローチにより既存の研究を越えることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は中国,米国,ルクセンブルグなど外国出張を予定しているため,資金を次年度に残した.
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