研究課題/領域番号 |
18K03274
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菅野 浩明 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90211870)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 量子トロイダル代数 / MacMahon 表現 / ゲージ・ベーテ対応 / Hitchin 系 |
研究実績の概要 |
Ding-庵原-三木 (DIM) 代数および,その一般化である A_n 型量子トロイダル代数(n=0の場合が DIM 代数)の絡み作用素 (intertwining operator) について、その様々な側面を研究した.DIM 代数の evaluation 表現に相当する Fock 表現を一般化した MacMahon 表現に対する絡み作用素を構成し,その交換関係から定まる R 行列の計算を行った. この R 行列は絡み作用素の相関関数が満たす差分方程式に現れることが期待される. また,複素 Chern-Simons 理論の正準量子化から導かれる U(1) 同変な変形 Verlinde 代数と class-S 理論と呼ばれる 4 次元超共形場理論の超共形指数の対応関係に関しても研究成果があった.両者が定める2次元位相的場の理論は Hitchin 系のモジュライ空間の幾何学と深く関わっている.その鍵となるのが複素 Chern-Simons 理論に局所化公式を適用すると U(1) 同変な変形 Verlinde 代数 が Hall-Littlewood 多項式のある特殊化のなす代数で記述できるという事実である.この特殊化は超対称真空状態を特徴付ける Bethe 方程式の解を代入するという操作として実現できる.この事実を利用し,ゲージ群のランクおよびレベルが低い場合について特殊化を与えるイデアルの生成関係式を求め,対応する2次元位相的分配関数を計算した.この結果は class-S理論の超共形指数に関する既知の結果を再現するとともに,超共形指数が計算されていない場合については,その結果に対する予想を与えるものである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MacMahon 表現に対する絡み作用素の研究の副産物として表現を無限テンソル積として構成する際の基本要素となるベクトル表現の絡み作用素を取り扱った.ベクトル表現に関する絡み作用素は量子トロイダル代数の絡み作用素の最も基本的な性質を備えており,量子 KZ 方程式の解の構成に用いることができると期待される.今年度の研究を通して,量子トロイダル代数と量子差分方程式のつながりを明らかにするための基本的な対象を見つけ出すことができた.
|
今後の研究の推進方策 |
量子トロイダル代数のベクトル表現に関する絡み作用素の相関関数を Jackson 積分を用いて書き下し,相関関数が満たす差分方程式を導くことを目標とする.また、可能であれば量子アフィン代数の R 行列との関係を探ることとする. 一方,DIM 代数の絡み作用素の相関関数(とくに4点関数)は Hopf 絡み目のホモロジー的量子不変量と関係していると期待されている.これまでの研究で DIM 代数の変形パラメータを特殊化 (t=q) することにより絡み作用素が Schur 関数で記述される場合について4点関数が composite 表現(有理表現)を与えた Hopf 絡み目の HOMFLY-PT 多項式を正しく再現していることが分かっている. 一般の変形パラメータでは Schur 関数の代わりにMacdonald 関数が現れるが,この結果をホモロジー的量子不変量に拡張することには,いくつかの困難が見つかっている.その解決法について様々な模索を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究開始にあたって差し当たって必要となる物品がなかったため,物品費の支出がなかったためと出張にあたって旅費を先方に負担していただいたことによる.次年度の研究経費は必要となる物品の購入と外国からの共同研究者の招聘にあてる予定である.
|