研究実績の概要 |
年度の前半は,昨年度から引き続いて非定常 Ruijsenaars 関数が2重楕円型可積分系の固有関数を与えるという予想について研究を継続した.2重楕円型可積分系は座標と運動量がともに楕円曲線に値をとる可積分系であり, 6 次元の超対称ゲージ理論の楕円曲線コンパクト化と深く関係している.また2重楕円型可積分系は座標と運動量を入れ替えに関する双対性を持ち,これは弦理論の S- 双対性や gl_1型量子トロイダル代数であるDing-庵原-三木 (DIM) 代数の SL(2, Z)対称性と関係している.残念ながら予想は一般的には成立しないことが分かったが,特別な場合には2重楕円型可積分系の固有関数と関係があることが確認できた.一方,6 次元の超対称ゲージ理論の観点から Affine Laumon 空間の楕円種数の計算に対応する非定常 Ruijsenaars 関数の一般化が定義できる.これを Macdonald 関数の一般化となる「分割でラベルされる新たな対称関数の族」とみなして,その性質を明らかにするとともに,適切なパラメータの極限をとれば既知の関数と一致することを確認した.
年度の後半は DIM 代数の MacMahon 表現について自由場で記述される Fock 表現との絡み作用素の真空期待値 (相関関数)が満たす KZ 型の差分方程式を導き,以前の研究で計算していた R 行列が現れることを示した.この際,絡み作用素のスペクトル変数のシフトを生成する作用素が普遍 R 行列から導かれることがポイントとなっている.また R 行列が対角的であるという性質から解は自由場の相関関数に対するWick の定理と同様に2点関数の積で書くことができる.この2点関数は Nekrasov 分配関数の構成要素を拡張したものとなっていることを示した.
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