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2018 年度 実施状況報告書

力学系の平均次元の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K03275
研究機関京都大学

研究代表者

塚本 真輝  京都大学, 理学研究科, 准教授 (70527879)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード力学系 / エルゴード理論 / 情報理論 / 平均次元
研究実績の概要

当該研究課題は力学系が平均的にいくつのパラメータを持つかを表す量である平均次元を研究することを目的としたものであった.この一年で,平均次元理論とレート歪み理論(という情報理論の一分野,情報の損失を許した情報圧縮の手法を研究するもの)との関連性について非常に大きな進展があった.極小な力学系に対して,その平均次元をレート歪み次元という情報理論の量を用いて表す公式を確立した.この公式は力学系のエントロピーの理論において知られている変分原理と呼ばれるものの平均次元理論版になっている.しかも,エントロピー理論において知られていることを単に平均次元に置き換えたというものではない.エントロピー理論における変分原理はある種の最大化問題として定式化されるが,平均次元に対する変分原理はミニマックス問題として定式化される.(二重変分原理と名付けた.)また,その二重変分原理を確立する過程で,極小力学系の上距離平均次元が適切な距離関数に対して平均次元と等しくなることも示した.この主張を示すことは20年ほどの間,未解決であった.これらの研究成果を記した論文は既に当該分野における一流の学術誌であるGeometric and Functional Analysisにアクセプトされて掲載予定となっている.ただし,まだ掲載年が未定であるため,後の「論文発表」の項目には記載しない.掲載年が決まれば,来年以降の報告書に記載したい.
さらに,私は「ポテンシャル付き平均次元」という概念を導入し,これに対しても類似の二重変分原理を示した.これは,力学系理論において従来知られていた「圧力に対する変分原理」の平均次元理論版になっている.この結果を記した論文は現在,学術誌に投稿中である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

上記で記した二重変分原理は真に新しいアイデアであり,またその過程で証明した,「極小力学系に対して,その上距離平均次元は適切な距離関数に対して平均次元に等しくなる」という主張は20年来の未解決問題の解決であった.論文が既に一流誌Geometric and Functional Analysisにアクセプトされていることからも,この成果が大きいものであることが認められていると考えてよいであろう.当初の計画以上の進展であると言って問題ないと考える.

今後の研究の推進方策

上記で記した二重変分原理を,グロモフが提案した幾何学から現れる具体的な無限次元力学系に適応してみる研究をまず行う必要がある.これによって,二重変分原理の重要性をより広く示すことができるようになるだろう.また,その過程で平均次元の具体的計算法の進展にも挑戦していきたい.
一方で,平均次元理論と情報理論・通信理論とのつながり自体もさらに掘り下げる必要がある.特に当該研究課題の目標の一つである,力学系の埋め込み問題に対して情報理論・通信理論のアイデアをさらに適応して研究を進展させていきたい.

次年度使用額が生じた理由

当初の予定では,国外の共同研究者との研究打ち合わせのために旅費が相当額必要と思われていたが,共同研究者の都合が悪くなったため,海外出張を取りやめた.(ただ,スカイプ等を利用することで,研究の進展は何とか果たすことができたことは幸いであった.)そのため旅費が予定より少なくなった.ただ,研究は当初の計画を超えて大きく動いており,次年度において,当初の想定より多くの旅費,また文献購入等のための物品費として有効に活用させていただきたいと思っている.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Hebrew University(イスラエル)

    • 国名
      イスラエル
    • 外国機関名
      Hebrew University
  • [学会発表] 平均次元に対する二重変分原理2018

    • 著者名/発表者名
      塚本真輝
    • 学会等名
      幾何学シンポジウム 基調講演
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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