研究課題/領域番号 |
18K03276
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅岡 正幸 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10314832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 力学系 / 分岐理論 / カントール集合 / 保存系 |
研究実績の概要 |
Moreiraらによってこれまでに得られていた結果によると,区間上のC^1級縮小写像系力学系によって定義された「ダイナミカルなカントール集合」を二つ持ってきたとき,それらの集合を定義する力学系をC^1位相でうまく摂動することで二つのカントール集合が交わりを解消することができる,すなわち,C^1-安定的に交わるダイナミカルなカントール集合は1次元ユークリッド空間には存在しないことになる.この結果はホモクリニック接触のC^1-安定性とも関わる重要なものであった.今年度の研究において,前年度に構成したBarrientosとRaibekasによる予想の肯定的な解決となる例の構成を注意深く見直すことで,高次元ユークリッド空間にける「ダイナミカルなカントール集合」の組でC^1-安定的な交わりをもつものを構成することができた.しかもこの例は,二つのカントール集合が安定的に交わりを保つためのハウスドルフ次元に関する下界に任意に近いハウスドルフ次元を持つもので,その意味で最良の例を与えている. 今年度は2次元面積保存写像におけるclosing lemmaについても研究を行い,これまではハミルトン微分同相写像のみについて証明できていた結果を2次元トーラス上の面積保存写像の場合に拡張することができた.ハミルトン微分同相写像は常に恒等写像とイソトピックであるが,今回証明できた対象はそうでないものも含まれ,closing lemmaがより広い範囲で成り立つことを示唆するものである.この結果は現在論文としてまとめているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度のC^2力学系の分岐に関する結果をカントール集合のC^1-安定な交わりの問題に対して応用し,興味深い結果を得ることができた.また,closing lemmaについてもその適用範囲を広げることができ,より一般の場合での証明を期待できるようになった.これらの成果を上げることができた一方で,実解析的な部分双曲的力学系の周期点の増大度に関する研究は今年度はあまり進展がなかったため,想定していたよりも研究が進んだ面とそうでない面を考慮してこのような自己評価となった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度,あまり進展がなかった実解析的な部分双曲的力学系の周期点の増大度に関する研究について,基本的な事実の確認を再び行い,ありうるシナリオを再検討することで研究の進展に結びつけたい. 今年度証明することができた2次元トーラス上の面積保存写像に関するclosing lemmaの論文を書き上げ,さらに一般的な状況での証明の糸口としたい. また,Barrientos-Raibekasの予想の解決となった例を高次元力学系の野生的挙動についての理解へと繋げる研究も行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当時は今年度に開催予定だった研究集会へ招聘して本研究に関する議論を行う予定であった研究者の旅費を計上していたが,研究集会の開催が来年度に変更になった. また,3月に参加を予定していた研究集会のいくつかが新型コロナウイルス の影響により開催中止となり,同じ理由で3月に予定していた研究連絡のいくつかも中止となった.
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