研究実績の概要 |
本年度は3次元Anosov流がすべての境界での傾きが正であるBirkhoff切断を持つときにはR-coveredになるという昨年度得た結果を,同時期に独立に同じ結果を証明したBonatti, Martyらと共著論文として書き上げた.この結果の発展として,R-coveredな3次元Anosov流は接触Anosov流と位相同値であろうというBarbot-Barthermeの予想の解決を目指して研究を進めたが,予想の肯定的な解決が最近Martyによってアナウンスされ,彼の論文の検証とそこで用いられた手法の解析を行って現在に至っている.また,部分双曲系と密接に関係する反復写像系の経験分布の収束に関する問題について,横山,中野,Varandasらと共同研究を行い,経験分布が収束しないという性質が摂動に対して安定的に現れる例の構成や,円周上の回転が生成する反復写像系における経験分布の強い収束などに関する結果を得ることができた.
また,拡大的な力学系が生成するCantor集合のペアでC^1級の摂動に対して安定的に交わりを持つものは存在しないことが知られていたが,高次元の場合にはC^1摂動に対して安定的に交わるようなペアを構成し.その構成を用いて最大余次元のホモクリニック接触が局所C^2-通有的な現象であることを示すことにも成功している.この結果は,ダイナミクスをグラスマン束に持ち上げてそこにC^1級摂動で安定的に交わりを持つCantor集合を構成するというもので,力学系の高階微分可能性が真に必要となる結果である.
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