研究課題/領域番号 |
18K03282
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
勝田 篤 九州大学, 数理学研究院, 教授 (60183779)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 素閉測地線 / 熱核 / 密度定理 |
研究実績の概要 |
素数の幾何学的類似として素閉測地線,結び目等が考えられることがこれまで多くの研究者により知られている.研究代表者はこれまで負曲率多様体上の素閉測地線の長さの分布の様子を調べることを目的として研究してきた.素数定理およびDirichletの算術級数定理の幾何学的類似が様々知られているがここでは特に数論では対応する結果の知られていない無限次拡大を考察する.その状況における最も簡単な場合である無限Abel群の場合についてはかなり以前に,砂田利一氏との共同研究によりある程度満足できる結果が得られていた. 次の自然な目標はべき零群ということになるが一般のべき零群に対する指針となると思われるHeisenberg群の場合について前年度に引き続き研究した.さらにこの研究とある程度共通の手法で解析できるコンパクトリーマン多様体のHeisenberg被覆多様体上の熱核の長時間漸近挙動についても調べた.後者の関連研究は確率論,微分幾何学等の分野で数多く知られており,それ自身としても興味深いと思われる. 前年度の報告ではこれらの漸近挙動の主要部はぼ完成して漸近展開の高次の項は引き続き研究が必要と述べたが,詳細を検討中にある種の解析的問題が残されていことが判明し,今年度はこの部分の解明のため,多くの時間を費やすことになったが,現時点では,上記の高次の展開も込めて,解決できたと考えている. その他には,前年度の博士課程院生との共同研究である「リッチ曲率がほぼ非正のコンパクトリーマン多様体のキリングベクトル場に関するある種の剛性定理」についての論文をまとめ,雑誌投稿の結果,幸いにも受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Heisenberg被覆多様体上の熱核の長時間漸近挙動および定負曲率リーマン面上の素閉測地線の長さのHeisenberg群による拡大に関するChebotarev型の密度定理については,論文はまだ執筆中ではあるが,ほぼ完成できたと考えている.しかし当初の2年目の計画であった後者の研究の一般の負曲率多様体の場合への拡張については,方針は明確であるが,詳細についてはもう少し研究する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
まず,熱核と定負曲率リーマン多様体の場合の素閉測地線に関する論文を完成し,後者の 研究の一般の負曲率多様体への拡張について詳細を詰める.さらにHeisenberg群以外の一般のべき零群の場合の研究に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎のため参加予定だった日本数学会年会が中止になり,その分の旅費が未使用となったため次年度使用額が生じた.今年度の旅費に充てる予定
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