研究実績の概要 |
コンパクト・ケーラー多様体のケーラー族上のケーラー・リッチ流について全空間のケーラーリッチ流と各ファイバー上のケーラー・リッチ流の間の関係を主に研究しました。その結果、各ファイバー上のケーラー・リッチ流とその補空間上のケーラー・リッチ流の間に、後者の留数として各ファイバーのケーラー・リッチ流が現れることを見出しました。これを示すためにまず、各ファイバー上のケーラー・リッチ流が標準束が擬正の場合カレントの意味で極小特異性を持つという条件の下で帯域的に存在することを示しました。このために代数多様体の場合の小平の補題に当たるものを証明する必要が生じますが、それをDemailly-Paunのケーラー錐の研究に使われたコンパクト・ケーラー多様体における正閉(1,1)カレントの代数的特異性を持つカレントによる近似定理を用いて乗り越えました。さらに補空間の上の固定したファイバーに沿ってポアンカレ増大を持つケーラーリッチ流を構成する必要が生じますが、これを固定したファイバーにそってい数pの軌道体を考えその上のケーラー・リッチ流を構成し、そのパラメータpを無限大にした極限が求めるポアンカレ増大を持つケーラー・リッチ流であることを示して構成しました。これらのケーラー・リッチ流の関係が留数で結ばれることはG.Schumacherの方法で示しました。この証明には、ケーラー・リッチ流を分数時間を持つケーラー・リッチ代入で近似する手法が使われます。このようにして各ファイバーのケーラー・リッチ流とその補空間のケーラー・リッチ流の間に関係を付けることができました。問題はそのケーラー・リッチ流の極限が(正規化された意味で)極小特異性を持つことですが、それは一般的には示せていません。現在のところ中心ファイバーのアバンダンスが必要な状況です。
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