研究課題
本年度はトーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性をトーラス束のミラー対称性の設定において具体的に議論できるように定式化し,実際に複素射影空間,それらの直積と,複素射影平面の一点ブローアップに対応するヒルツェブルフ曲面の場合にホモロジー的ミラー対称性がうまく成り立っていることを示した.これらの,複素多様体側がトーリック多様体の場合のホモロジー的ミラー対称性は,上で上げた例でについてはすでに肯定的に議論されている.しかしそれらの議論ではシンプレクティック多様体上の深谷-ザイデル圏の充満部分圏と複素多様体上の連接層の導来圏の充満部分圏をとって,それらの構造が一致することを直接示す方法がとられていて,なぜホモロジー的ミラー対称性が成り立つべきなのかという問に答える形にはなっていない.一方,トーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性をトーラスファイバー束のミラー対称性の設定で議論することについても先行研究はあったが,その議論は逆に具体性に欠け,何ができているのかが見えないという不満があった.本研究ではこの両方を解決する形でホモロジー的ミラー対称性を議論した.以上の結果は2つの論文にまとめられ,ひとつはすでに論文雑誌に出版され,もうひとつはプレプリントの状態である.本研究課題は例外的生成系を持つ三角圏のA∞増強の構造の解析を主なテーマとしているが,本研究はそのような例外的生成系を持つ三角圏の幾何学的な例を議論していることになっている.
2: おおむね順調に進展している
上述のように,本年度の研究は本研究課題の主な研究対象である例外的生成系を持つ三角圏の幾何学的な例を扱っている.このような幾何学からの知見が例外的生成系を持つ三角圏のA∞増強の構造についてのさらなる理解につながることが期待できる.
本年度の研究において定式化したトーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性をより一般の例に対して具体的に応用する.また本年度定式化した,トーリック多様体のミラーの上のモースホモトピーの圏に対応する深谷圏の構造をより正確に理解する.
新型コロナウイルスの影響により,旅費を全く使わなかった.今年度も新型コロナウイルスの状況をみつつ柔軟に対応する必要がある.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Journal of Geometry and Physics
巻: 160 ページ: 103965~103965
10.1016/j.geomphys.2020.103965
Journal of Mathematical Physics
巻: 62 ページ: 032307~032307
10.1063/5.0029165