研究課題/領域番号 |
18K03293
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
梶浦 宏成 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30447891)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホモトピー代数 / ミラー対称性 / 三角圏 |
研究実績の概要 |
本年度は前年度に引き続き,複素多様体側がトーリック多様体のときのホモロジー的ミラー対称性をトーラスファイバー束のミラー対称性の設定において具体的に示す研究を行い,それらの議論の一般化について考察した. 前年度はトーリック多様体の典型例である複素射影空間,それらの直積と,複素射影平面の一点ブローアップに対応するヒルツェブルフ曲面の場合についてホモロジー的ミラー対称性を肯定的に議論したが,本年度はより一般の場合について,特に特異点を含む場合についての研究を開始した. 上述のホモロジー的ミラー対称性は,まず複素多様体であるトーリック多様体をトーラスファイバー束とみなし,Strominger-Yau-Zaslow に従ってファイバーのトーラスについて双対をとることによってミラー対称なシンプレクティックトーラスファイバー束を構成し,トーリック多様体上の連接層の導来圏と,双対トーラス束においては深谷圏の類似物としてモースホモトピーの圏を考えて両者を比較する.この意味で,今のところ,特異点を1つ持つ射影直線の場合に,通常の射影空間などの場合と同様にホモロジー的ミラー対称性が成り立つことが分かっている.今後,より広いクラスの,特異点を持つトーリック多様体やその拡張について同様のことが成り立つことを確認していく予定である.特に,特異点を一つ持つ射影直線の場合を含め,特異点を持つ代数多様体で,特にそれに対して適切に定められる三角圏が(強)例外的生成系を持つような場合についての例を増やしていくことを予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特異点を含むトーリック多様体について前年度定式化した方法でホモロジー的ミラー対称性を議論するということであれば,それが可能な例を増やしていくことは可能である.一方,特異点論における興味深い例を扱おうとすると,トーリック多様体の枠組みを超えたトーラスファイバー束による定式化をする必要があり,特にその特異ファイバーの扱いについての新しい考察が必要になると思われる。この意味で,興味深い特異点の例を,それらを扱うことができる枠組の考察とともに探っているところであり,少し時間をかけたいところである.
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今後の研究の推進方策 |
研究に時間を使った分だけ研究を進展させることができると考えている.また,そろそろ研究会開催などを通じてトーリック多様体のホモロジー的ミラー対称性や境界付き多様体のモース(ホモトピー)理論などについての情報交換を活発に行いたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により研究会開催による参加者の旅費や研究会参加のための旅費を使う機会がなかった.次年度はそろそろこれらが可能になると思われる.
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