研究課題/領域番号 |
18K03297
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩井 敏洋 京都大学, 情報学研究科, 名誉教授 (10021635)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ディラック方程式 / スペクトル流 / 写像度 / バルク・エッヂ対応 |
研究実績の概要 |
量子系のパラメータ変化に伴うエネルギー固有値の変化を研究した。具体的には、2次元 Kramers-Dirac oscillator と称する4x4行列の形で表されるディラック作用素を定義し、その固有値、固有状態を具体的に計算した。エネルギー固有値の族は、パラメータ変化に拘わらずに常正の値をとる固有値からなるバンドと、常に負の値をとる固有値からなるバンド、そして、パラメータ変化に伴って正から負に変わるエネルギー固有値とに分割される。この作用素は、Quantum spin Hall 効果を説明するモデルとなりうる。また、自由(外場のない)3次元ディラック方程式を半径 R のボールの中で考えて、境界の2次元球に APS さらに chiral bag と呼ばれる境界条件を課したものに対して、やはりパラメータ変化に伴うエネルギー固有値の変化を研究した。固有値の全体は、正のバンド、負のバンド、そして正から負、負から正に変化する2つの固有値の族とに分割される。また、半径が十分大きいときには、正または負のバンドの属するエネルギー固有値は互いに接近していて、総体として、古典的に取り扱うことが可能となる。その結果、3次元古典的運動量空間上で定義されるエルミート行列が導かれる。その固有値の固有空間に関連して、ある写像の写像度が定義でき、それが、パラメータ変化に伴って、臨界点の前後で不連続的に変化する。その変化量が、元の量子系のエネルギー固有の変化度を表す量であるスペクトル流と一致することを示した。これは、関連する個体物理の分野では、バルク・エッヂ対応と呼ばれるものに相当する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の項目で書いたように、パラメータ変化に伴うエネルギー固有値の変化についてすでに2件の研究成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後とも、同様の方針で、パラメータ変化に伴うエネルギー固有値変化について、モデルを色々と変えながら、研究を続ける。特に、バルク・エッヂ対応は、物理学でもホットな話題なので、数学としての議論を具体的に推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額なので,次年度に繰り越すことに問題はないと考える。この額を消耗品に使う予定。
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