研究実績の概要 |
①(リサージュ組ひもの研究). リサージュ曲線とは三角関数を用いて定義される平面上のある種の閉曲線であり互いに素な整数 m, n によってパラメータ表示される. 曲線を正規化すると, リサージュ曲線の上の任意の点は, 時刻 1 で元の位置に戻る. リサージュ曲線の上の等間隔な3点をとり, これらの3点の曲線上の点の動きを考える. 3点は互いに衝突しないので, 各時刻で曲線上の3点から三角形が定まる. 時間とともに, 曲線上の3点から定まる三角形は形状を変えるが, 時刻 1 で元の形状の三角形に戻る. 従って3点の軌道から本数3 の組ひも (3次組ひも)が得られる. 報告者は, 小川 裕之 氏, 中村 博昭 氏との共同研究によりリサージュ(3次)組ひもを Christoffel 語によって特徴づけた. リサージュ組ひもの共役類は無限個存在するが, 著しい対称性もち, (写像類群の元として)擬アノソフタイプであることがわかった. さらにリサージュ組ひもの位相的エントロピーと Sturn-Brocot 木の間の関係を明らかにした. ②(ホワイトヘッド補空間のファイブレーションの研究). 上の①の研究を遂行するために, 報告者は, Christoffel 語やSturn-Brocot 木に関する基本事項を学んだ. これらの用語と関わる Farey 近傍とよばれる有理数のペアーとホワイトヘッド補空間のファイブレーションの擬アノソフモノドロミーには意外な関係があることがわかった. これは Tali Pinsky (The Technion)との共同研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたリサージュ組ひもの研究は昨年の秋にプレプリントを完成させ, 現在学術雑誌に投稿中である. 今後は, 一般化されたリサージュ曲線から定まる3次組ひもの特徴づけを目指す. 共同研究者は同じ大学に所属しておりコロナ禍ではあるが, 対面の研究打ち合わせもスムーズに行うことができている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年は新型コロナの影響で, 科研費申請時に予定していた国内外の出張が全て中止になった. 次年度に繰越になった研究費は, オンライン会議をスムーズに行うためのタブレット, コンピュータ周辺機器の購入のために使用する. 国内の対面の研究集会については, 2021年に開催が予定されているものがあるので国内の出張旅費, あるいは国内の共同研究者との共同研究のための研究打ち合わせの旅費に充てる.
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