研究実績の概要 |
曲面の写像類群の主な元である擬アノソフの複雑度(エントロピー, 曲線複体に作用する漸近的移動距離など)に対して: 課題1. 写像類群の部分群(あるいは特徴的な部分集合)の無限族に対し擬アノソフの複雑度の最小値の漸近的挙動を決定する. 課題2. 固定された3次元双曲ファイバー多様体Mに対して, Mのファイバーの擬アノソフモノドロミー全体(一般に無限集合)の擬アノソフの複雑度の基本性質を明らかにする. ① (廣瀬 進氏との共同.) 作間, Brooks は任意の3次元閉多様体Mのへガード分解に対して, へガード曲面をファイバーとする3次元双曲ファイバー多様体であって, Mを2重分岐被覆するものが存在することを示した. このような構成のモノドロミーとして現れる擬アノソフ元全体について2020年に上記の課題1を実施した. 本年度は2020年の結果をさらに発展させ, 3次元閉多様体のある無限族について課題1の成果を得た. ② (廣瀬 進氏, 井口 大幹氏, 古宇田 悠哉氏との共同.) 3次元球面内の任意の絡み目 L には橋分解とよばれる分解がある. 橋分解の橋指数が n ならば, 橋分解のゲーリッツ群は, 2n 個のマーク点付き球面上の写像類群の部分群を定める. 本研究では3次元球面内の自明な結び目やホップ絡み目の橋分解の安定化によって得られる橋分解のゲーリッツ群の列について課題1を実施し成果を得た. ③ (Baik, Shin, Wu との共同.) 擬アノソフの曲線複体上の漸近的移動距離について課題2を実施した. 特に3次元双曲ファイバー多様体Mについて, M のファイバーのThurston ノルムと擬アノソフモノドロミーの漸近的移動距離についての幾つかの基本的な性質を明らかにした.
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