接分布と束準同型写像の特異点の研究に関して、多様体上に複数の接触構造がある場合にその微分同相による分類について検討を行った。ダルブーの定理があるため、片方の接触構造は標準的なものにできる。すると、もう片方の接触構造を標準的な接触構造を保ったままどれだけ簡明な式にできるかが問題となる。そして、もう片方の接触構造ともとの接触構造との接触が問題となり、著者らの先行研究である接分布と束準同型写像のモラン特異点の結果が応用できることがわかり、簡単な分類を得た。あとはこの分類の幾何学的意味を明らかにできれば複数の接触構造がある場合の理解が深まる。 特異点を持つ曲面と円柱の接触についての研究に関して特異点が通常の曲面に最もよく現れるホイットニーの傘の場合と波面に最もよく現れるカスプ辺の場合に詳細を調べた。ホイットニーの傘の場合、円柱との接触を表す写像が特異点をもつ必要十分条件と階数1の特異点をもつ場合の条件の幾何学的意味を円柱の軸と特異点の接方向と主方向の関係を用いて記述した。カスプ辺の場合、円柱との接触を表す写像が特異点をもつ必要十分条件と階数1の特異点をもつ場合の条件の幾何学的意味をカスプ辺の法曲率を用いて記述した。さらに高次の特異点をもつ場合は法曲率とカスプ辺の曲線の焦面およびその射影に表れる曲線の特異点を用いて記述した。このことからカスプ辺には正則曲面の場合に意味付けが対応するような円柱方向は存在しないことがわかった。言い換えれば、円柱の半径は 0 や無限大となるような場合であると解釈するのが妥当である。そして、円柱との接触を表す写像の性質はカスプ辺の特異点曲線の幾何学で表されることがわかった。 これらのことをいくつかのセミナーや研究集会で情報交換を行い、関連する問題や新たな応用についての研究課題を得た。
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