研究実績の概要 |
令和2年度も,前年度(令和元年度)に引き続き,Darondeau-Pragaczの公式の複素コボルディズム理論への拡張,普遍ファクトリアルHall-Littlewood P-, Q-関数の母関数表示と,これらに関連する一連の「Gysinの公式」,「留数公式」を中心に研究を行った。この内,Darondeau-Prgaczの公式の複素コボルディズム理論への拡張および「普遍2次的Schur関数」に関する結果をまとめた論文「Darondeau-Pragacz formulas in complex cobordism」(arXiv:1910.03649)は雑誌Mathematische Annalenへ掲載されることとなった。また,この論文を修正する過程で,もう一編の論文「Generating functions for the universal factorial Schur P- and Q-functions」(arXiv:1705.04791)にも大幅な修正を加え,特に,新しい結果として「双対Grothendieck多項式」の母関数表示および「双対K-理論的Schur P-, Q-関数」の母関数表示の予想式を追加した。こちらの論文は近日中に公開予定である。さらに,Gysin写像に関連する話題として,Gustafson-Milne型の等式や,Chen-Louckの補間公式,Hiepの公式, Guo-Sunの公式, Feher-Nemethi-Rimanyiの公式について調べ, これらが複素コボルディズムにおけるDarondeau-Pragaczの公式から統一的に得られることを確認した。さらに,これら一連のGysinの公式は,トーラス同変コホモロジーにおけるAtiyah-Bott-Berline-Vergneの公式やBottの留数公式,さらにはZielenkiewicz, Weber-Zielenkiewicz, Allman-Rimanyi, Rimanyi-Szenesによる多重留数公式などと密接に関連しており,相互の関係を明らかにする必要があるが,これに関して部分的な結果を得ている。さらには,多様体の特性数の計算への応用についてもいくつか考察を進めた。
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